アラマタ伝説
「エキセントリックになろうと、幼稚園の時分から頑張っ
てきた。(中略)
自分はまだエキセントリックになれず
にいる。せいぜいが変人だ。」
「エキセントリック」(集英社文庫 荒俣宏コレクションU、ISBN4−08−748662−1)
あとがきより
アラマタは奇行の持ち主としても知られている。
「奇人」「エキセントリック」の定義は難しいだろうが、
「世界変人記録」(草想社、ジェイ・ロバート・ナッシュ著)によると、
- 奇人は尊敬されることこそないが、どこか人に愛され、畏怖される人間でなければならない。
- 奇人は生涯、奇人でなければならない。
- 奇人にとっては、奇行が日常であらねばならない。いっときの思いつきや、究極な行動は単なる一過性の気まぐれにすぎない。
- 奇人は夢みる男(あるいは女)でなければならない。
- 奇人はその行為によって、社会になんらかの強い衝撃を与えなければならない。
- 奇人はその行為をつくるものではない。自然体のなかで完遂せねばならない。
だそうである。
小学生のころから都々逸にハマり、イソギンチャクを飼育し、本を買うためだけに働き、あげくのはてに昼飯を抜いてまで本を買いあさり、その本が一杯になったら(その本を置いたまま)引っ越しを続ける。興味をもったものには、マンガから博物学まで人生を捨てて首をつっこみ、その著作は300を超える。
こんなアラマタには、もうエキセントリックの称号を与えてやっても良いのではないだろうか?
ここでは、アラマタにまつわるホントかウソかもわからない話や、著書等のなかで出てきた「?」な発言を、とにかくなんでも羅列していきたい。
真意のほどは判明しだい付記する。
また、「こんな話を聞いた」「街でみかけたアラマタ」「それは間違ってる」などなど、なんでもいいのでぜひに情報もよせていただきたく、切にお願いする次第である。
それでは、スタート!
- アラマタは、風呂に入らない。
(風呂に入る時間があれば本を読んでいたい、との理由から)
→これに関しては「風呂代わりに平凡社前の公園で砂浴びをしていた」との話もあり。
- アラマタは、歯を磨かない。
→最近はヤスコ夫人の指導のもと、毎日ちゃんと電動歯ブラシで磨いているそうです。
- アラマタは、本がありすぎて蔵書を納めるためだけの家が20数軒ある。
→これはウソ。ダイヤモンド社「本棚が見たい!」のインタビューによると、「ここ(平凡社の一室)を含め4ヶ所しかありません」とのこと。練馬の実家、サラリーマン時代に住んでいた狭山の1軒屋、平凡社、自宅の地下、の4ヶ所らしい。もっともインタビューは1994年9月の話なんで、現在はもっと増えているかも。
- アラマタは甘党で、溶けたパイントカップのアイスクリームを一気飲みする。
- アラマタは、本が増えるとそれを残したまま引っ越しする。
- アラマタは、一度読んだ本の内容は絶対に忘れない。しかも「何という本の何ページ」まで即座に言える。
- アラマタには、国会図書館に行けばいつでも会える。
- アラマタは、平凡社に寝泊まりしている。
→「平凡社 世界大百科事典」の制作に携わって以降、平凡社の寝泊まりが常習化していたアラマタであるが、その生活は今でも変わっていないらしい。2000年2月7日放送「スタジオパークからこんにちは」(NHK)で堀尾アナに「今でも大手の出版社に、あの、寝泊まりしてらっしゃるんですか」と聞かれ、「はい、相変わらず、ええ・・」と答えている。ちなみに「課外授業 ようこそ先輩」(NHK)のなかでは、同社で事務イスを並べて横たわるアラマタが映っている。「寝ている」というよりは「死んでいる」に近く、あの状態で床に転がっているのを見つけた掃除のオバチャンが「人が死んでる!」と思ったのもやむを得なかったろう。
- アラマタは、ぬいぐるみに使う目玉を集めている。
- アラマタが、わずか半年で杉浦日向子氏と離婚した原因は、実はアラマタに数十年間つきあっていた女性がいたから。
- アラマタは、ここ十数年、昼夜逆転の生活を送っている。
- アラマタは、本に金を使いすぎて服は数着しかもっていない
→実はコレ、けっこういいトコついてるのではないかと思っている。同じセーターやジャケットを着た写真が多数発見されているのである(
例えば、集英社の「怪奇の国ニッポン」のP186と中公の「帯をとくフクスケ」の著者近影の写真など。ちなみにどうでもいい事だけど中公の著者近影は写真が逆)。普段着ている服も、夏場は開襟みたいなシャツかダイエーで買った様なポロシャツ。冬場はセーターにジャケットが基本。まあ、「数着」という事はなくても、かなり所有枚数は少ないのではないだろうか。
- アラマタは、突然の死に備えて蔵書分配リストを既に作ってある。
- アラマタは、中学生時代から神保町に通い版木を買い集めていた。
(M氏提供)
- アラマタは、平凡社住まいが永く数十年インスタントラーメンを食べ続けてきたことから、インスタントラーメンの銘柄には異常に詳しい。その知識は1冊の本が書けるほど。
(係灼朿氏提供)
- 「どんな新刊本も十年ほど寝かせておいて、内容も装幀も手になじんでくるのを待つのが、愚生の読書法である。(中略)活字が熱くて目に痛いのだ。」
- (はじめて慶應義塾大学の図書館に行った日のこと)
「その日は1日、夢にまでみた古い古書の大洪水にさらされることになった。あのとき、よくショック死しなかったと思う」
- 「25歳の頃、なまいき盛りのサラリーマンだったぼくは、フランス文学や前衛芸術のたぐいを愛して得意満面だった。しかし、読めば読むほど、同僚や若いOLから浮き上がった。空しいから、さらに読んだ」
- (所有している江戸本の中身を見た取材記者に「古文で読みずらいですね」と聞かれ)
「それでも活字でしょ。まだましですよ。」
- (集英社「青春と読書」の丸山茂雄氏との対談から)
荒俣「漫画って、大体半日くらいで読めちゃうんですね。宵越しの金は持たない、じゃないけど、
本は何日もかけて読むものじゃないという感じがどうもあって、全部ひと晩勝負、かなり
厚い本もほとんどひと晩で読むという習慣がずっとついちゃいましたね。じっくり読むと
いうのがすでに小学生くらいのときにできなくなっていたのかもしれない」
丸山「今もはやいんですか」
荒俣「ええ。とにかく、先へ先へという感じで、気がつくと何を読んでいたのかわからなかった
という(笑)」
- (同。新書の思い出にふれて)
「ぼくは錬金術で大金を儲けようという夢をもっていたんですけど、そのものずばり、『錬金術』
という新書が出て、あんなものがどうして新書で出るんだろうと呆然とした記憶があります」
- (季刊「怪」第零号、水木しげる御大・京極夏彦氏との対談から)
水木「しかし荒俣さんも忙しそうですな。方針は毎月二冊の出版ですか(笑)」
荒俣「何もしないで文を書いて暮らさせていただいているので、月に二冊ぐらい書かないと、
世の中の働いている人に申しわけないじゃないですか。世の中の人は朝八時に起きて、
満員電車に乗って、残業やって、上役に怒られて帰ってきて、お母さんに怒られたり
してるんですからね。」
水木「しかし、月に二冊は大変だなあ」
荒俣「いや、大したことないですよ。内容にはいっさい責任をもっていませんから」
- (日本TV「秘密手帳」より。聞き手は坂上みき氏。「甘いモノが非常にお好きって聞いたんですが」と聞かれ)
「甘いモノは・・大好きです。お酒を飲まないかわりに羊羹とたいやきで暮らしていた事
があります。」
- (同、「健康管理はなさっていますか」と聞かれ)
荒俣「健康はまったく気をつけてません。」
坂上「いや・・・・す、少しは気を使われたほうが・・・。」
荒俣「気をつけても死ぬ人っているでしょう?毎月検査してもガンの発見率なんてたいした
ことないらいしですし。ほとんど本人の運と素質でしょうね。努力して健康管理を
やっても何十分の一くらいの効果しかないんで、一切しません。」
坂上「はぁ・・・」
荒俣「まあ、こんな仕事ばっかりしてると、恥と悲しみが増えるだけでしょう?
長生きしてると。なるべく早く死んだほうが本人は幸せだと思ってるんで。
まあ、ゆっくり自殺してるようなモンです」
- (同、「休みの日は何をしていますか」と聞かれ)
荒俣「昔は休みがありませんで、365日オープンのコンビニ作家だったんですが、
最近はさすがに日曜だけは休むようにしてます。だいたいウチで飼っている水族館の
掃除をしたり、園芸ショップで草花を買ってきて庭に植えたり・・・・ナチュラルな
生活を送っています。」
坂上「今週末も小笠原に行かれるとか?」
荒俣「小笠原にしかいない、ユウゼンという綺麗な魚を採りに行こうと思ってます。」
坂上「ご自分で潜って採られるうですか。」
荒俣「はい、28時間揺られて採集に行こうと思ってます。」
坂上「船酔いはなさらないんですか」
荒俣「ちょー弱いです。1時間揺れただけで死んでいるという。
それでも採取したい一心で・・。」
- (2000年2月7日放送「スタジオパークからこんにちは」(NHK)より。「若い頃よく女性に興味をもちませんでしたね」と聞かれ)
「そっちへ流れれば人生は幸せになるかも知れないけれど、知りたいと思う事を知ることが
できないと思いました。人生とは何かを犠牲にしなければならないんですね。
15歳くらいで覚悟をきめました。」
- (同、博物図鑑の話になり)
「帝都物語が売れたとき、腰が抜けたんですがね、1年間でですね、印税が1億5000万円
くらい入ってきたんですよ。で、こういう(世界大博物図鑑の事)博物図鑑を買い集めたら
10冊か15冊で大半は無くなりました」
- (同、一問一答より)
〜 一日の睡眠時間は? 〜
「サラリーマン時代は2時間でしたが、今は5時間くらいですね」
〜 原稿を書くときの筆記具は? 〜
「100円のボールペンです」
- (「ブルータス」<2000年7月1日号・結婚特集>のヤスコ夫人とのインタヴューより)
ヤスコ夫人「荒俣は私のジャスト・マイ・タイプでした」
取材記者 「じゃすと、まい、たいぷ・・・・・・・」
荒俣 「妻はガマとか毛虫とかヘビが大好きなんですよ」
→なんか、「ヤスコ伝説」も必要な気がしてきました・・。
- (同インタヴューより。歯槽膿漏のアラマタに対し)
ヤスコ夫人「早く治してもらって、マクラをヨダレで汚さない様にしていただきたい」
- 東急東横線の学芸大学駅から行ける目黒通りにある有名な中華料理店から出てくる荒俣が目撃される(平凡社の近く)。
目撃者いわく、「背中を丸めていたせいか、思ったより大男ではないなと思った」との事。
(I氏提供)
- 平成11年2月頃、平日に池袋で巨大な人影を発見。
少しだけ尾行したところ、某・外資系銀行の支店に入って行った、との事。
(K氏提供)