「スタジオパークからこんにちは」に出演 2



ここで一服、会場からの質問に答えるコーナー。
質問は「どうしたら読んだ本を忘れない<歩く百科事典>になれますか」というもの。
荒俣「これはですね、そんなに難しくないんですが、いかに好きになるか、ハマるか、という事です。
   熱中すると、人間、一気に力が増すんですね。あとは繰り返しです。動物もそうなんですが、
   10回も繰り返せば憶えます」
堀尾「決して記憶力がいい訳ではないんですね」
荒俣「はい」


第三のキーブックは「平凡社 世界大百科事典」。
堀尾「どんな人が作ってるのかと思ってました。特徴は?」
荒俣「監修された加藤周一さんや前の社長さんの下中弥三郎さんが変わった考えを持ってまして
   ね、百科事典っていうのは一番新しい知識を与えるだけではない、間違った情報、デタラ
   メな情報、ウソも大事な情報なんだと。総合的な解釈をした時に、学者はそういうものを
   書けないんです。そういうスタッフが必要になって呼ばれました」
   (註:人物名の漢字に自信ありません・・)
堀尾「調べるのは大変だったでしょう」
荒俣「このとき、『その他雑部門』というのが出来ましたが、スタッフは私一人でした」
堀尾「荒俣さんの文章は面白いんですよねー」
荒俣「特徴がありまして、普通は断定するんですが、私のは昔の話ばかりですんで、すべて『〜とい
   われている』とか『〜ということである』がついています。こんなのは百科には載った事はな
   いんじゃないでしょうか」
堀尾「どのくらいやられていたんですか」
荒俣「4年間くらいです」
堀尾「大変だったでしょう」
荒俣「みんな帰れませんね。それから居ついちゃったんです。体力勝負ですね」
堀尾「スポーツはやられてたんですか」
荒俣「スポーツは・・やったことがありませんね」


第四のキーブックは「帝都物語」。
堀尾「どういうきっかけでお書きになられたんですか」
荒俣「知り合いの編集者が小説の雑誌を立ち上げまして、いろんな雑情報を仕込んでいる人
   たちに好きな事を書かせようという企画があがりました。その中の一人に選ばれたん
   です」
堀尾「はい」
荒俣「ちょうどその頃、路上観察をやってまして、東京のヘンな物に詳しかったんです。
   で、それを使った小説を書きたかったんです」
堀尾「どのくらいで書かれたんですか」
荒俣「これは連載で4〜500ページあったんですが、早い時で1週間、遅くても2週間ですね」
堀尾「へー! 組み立てとか大変でしょう」
荒俣「私は考えません。が、出るまでが大変なんです。お祓いをしたり、小説の神様がつくまで
   いろんな事をやらなきゃいけない(笑)」
堀尾「そういうのを信じてるんですか?」
荒俣「信じてはいないんですが・・自分に信じ込ませる事で、自分自身を改造します。講談師に
   なったつもりになると、自分でしゃべり始めるんで、あとはそれを書けばいい訳です。
   そういう体験をこの時しました」

ここで「帝都大戦」の映像が流れる。

堀尾「ご自分の作品が映画になる、ってのはどうですか」
荒俣「いやあ、嶋田さんの顔にびっくりしました。小説を超えてる、と」


第五(最後)のキーブックは「世界大博物図鑑」。
同図鑑から「象〜ガネーシャ」「麒麟」「ユニコーン」「河童」などの図を紹介。
荒俣「普通の博物図鑑と違い、実在・非実在関係ないんです」
堀尾「博物学っていうのは?」
荒俣「現在80〜90歳くらいの方は博物学の講義を受けたことがあるのかもしれませんね。19
   世紀まで自然物を研究する学問でした。今の生物学と違って、名前の由来、歌にどう歌われ
   たのか、味はどんなものかまでを研究する総合的な学問でした」
堀尾「もうないんですか」
荒俣「今はありません。博物学という講義もないし、博士にも教授にもなれません。
   雑多すぎたんですね」
堀尾「こういう本(世界大博物図鑑の事)は売れますか」
荒俣「売れません」
高見「赤字ですか」
荒俣「帝都物語が売れたとき、腰が抜けたんですがね、1年間でですね、印税が1億5000万円
   くらい入ってきたんですよ。で、こういう(世界大博物図鑑の事)博物図鑑を買い集めたら
   10冊か15冊で大半は無くなりました。印税は少ないし家が3件くらいたつほどの赤字で
   す。元はものすごく高いんですよ」
堀尾「高いもんなんですねえ」
荒俣「世界にもこんな事をやってる人はいない様です。パリの古本屋に行ったとき、こんなものを
   作っているヤツはどうかしている、と言われました」

ここで「人間講座」の宣伝。VTRも流れる。
その後、スタジオのお客さんからのメッセージ。
「人間講座、楽しみにしてます。私も海外旅行をしますが、ガイドブックに載ってないところばかりで、
参考にしてます」というもの。
荒俣「私としては非常に嬉しいご意見ですね。ぼくは学者ではないんで、みんなに体験してもらえる
   ガイドブックを作りたいんです。さっきの図鑑もそうです」

そして一問一答へ。

堀尾「一日の睡眠時間は?」
荒俣「サラリーマン時代は2時間でしたが、今は5時間くらいですね」
堀尾「飼っている海水魚はどうやって入手してるんですか?」
荒俣「自分でマスクをかぶって潜って採ります。ダイビングで」
堀尾「原稿を書くときの筆記具は?」
荒俣「100円のボールペンです」
堀尾「宇宙に行ってみたいですか?」
荒俣「これは、ぜひ行ってみたいですねえ」
堀尾「好きな食べ物は?」
荒俣「たいやきです」
堀尾「世界の国でどこが好きですか?」
荒俣「文明国も好きですが、マダガスカルとか自然の残っている島を探検したいですね」

時間もなく、あわただしくラスト。

堀尾「実はフリップも用意していたんですが、オタクになる条件をお伺いしておりました。
   女にモテると思うな、貧乏でもいい、世の中のためになることを考えるな、少なくとも30
   年は続けろ、だそうです」
荒俣「今、悩んでいる子供達も多いと思いますが、これをすると30年後には感心する人になると
   思います」
堀尾「人間講座もぜひご覧下さい。今日はどうもありがとうございました」

おしまい。

通常は番組中にFAXやメールを募集するんですが、この日(月曜日)はスタジオパークの休館日の関係からか1月31日の収録されたものの録画放送でした。
質問やメッセージなどはすべて会場に来ている人から集めたものだそうですが、「飼っている海水魚はどうやって入手してるんですか?」などという質問をみても、最初から用意されていた可能性が高いですね。そんな話は一切出てこなかったんだし。
まあ、いいんだけど。