ジャパンスタイルの魅力「日本の香り」開催 3



15分の休憩をはさみ第2部の開始。
2部のテーマは「日本の俳句と香り」で、香りにまつわる俳句の紹介が中心でした。
黛さんのトークが中心で、アラマタはツッコミ(ボケ?)程度のトークしかしてませんので、絡んだ面白いところだけを簡単にご紹介します。
なお、「〇〇」は、聞き取れなかった所です。
すいません。

まず最初に高浜虚子の句
「木犀(もくせい)の 縁(えん)にひれ伏す 遣いかな」
が紹介される。
金木犀の咲く庭で師が現れるれるまでひれ伏して待っている様子を表しているのか、緊張感と木犀の香りがしてくる句。

田中 「どうですか、荒俣さん。」
荒俣 「あの・・・複雑な・・(笑)。木犀が咲いてるんですから由緒あるお屋敷なんでしょう
    けど・・。
    虚子の生活や、あるいは人生を重ね合わせて見ると・・・・・いつ頃の句ですか?」
黛  「わかりませんが、かなり晩年ではないかと・・・」
荒俣 「そうですか・・・普段の生活とは違う場所に行ったとまどいというか、緊張感が出てます
    ね」

続いての句は
「しろたえの 菊の枕も 〇〇〇し」(杉田〇〇)。

田中 「荒俣さんはどんな枕でお休みになってらっしゃいますか(笑)」
荒俣 「えーと・・(笑)、頭の形が悪いのか、枕がいつも合わないんで、『安眠枕』という二段に
    なった枕を使っています。起きたら無いんですけど(笑)」
黛  「私はまた、浅草に注文されたのかと(笑)」
荒俣 「いやいや・・・(苦笑)」

次の句は
「夏の夜の 森の匂いの 髪ほどく」(野沢節子)。
ふとした瞬間に昼間の高原の香りがしたという情景表現と、髪をほどいたあとのストーリーまでをも想像させる名句。

荒俣 「これはもう、既に森の中で逢瀬(おうせ)があったと考えなきゃいけませんね」
田中 「えっ!? 森の中でですか!?(失笑)」
荒俣 「最初に読んだとき、もの凄い怖い感じがしたんです。『ほどく』だからイイですけど、
    『すく』だったら、嫉妬の象徴ですよね。森の中で喧嘩をして帰ってきて、髪をすいて
    いたら怖いですよね・・」
田中 「まぁ、発表した時点で作品は作者の手を離れてしまいますからね・・・いろんな解釈が
    あっていいんですが・・・・(苦笑)」
黛  「荒俣先生、あの・・・俳句の観賞は、読む人の体験を映すっていうんですよ(笑)。
    センセイ、経験豊富なんですねぇ(笑)」
荒俣 「・・・いやぁ、ボクも髪には興味がありまして(笑)・・・髪を『すく』と『ほどく』は全く
    違う、と歌舞伎役者に随分と言われてまして・・・つい・・・・」

そして沈丁花(じんちょうげ)に関する句が2首紹介される。

荒俣 「私、夜歩くのが好きなんです。特に春先には沈丁花の香りどこからかしてくるんですね、
    しかもどこにあるのか解らない。印象に残る香りです。」

ここからは事務局が選んだ「黛さんが読んだ句」を紹介。
「香水の 枕詞(まくらことば)の 〇〇匂う」

田中 「荒俣さん、素敵な句だと思いませんか。」
荒俣 「そうですね、好きな句です。
    枕詞っていうので和歌との違いも踏まえていますし、面白い句ですね。」

「刃を入れて 桃のにほわす 一人の夜」

田中 「女性の句で『刃』という言葉が最初に来るというのはどうですか。」
荒俣 「女性らしい鋭さですよね。男だったら『刃』は使わないんではないでしょうか。
    この句を読むと最終的な決め手を繰り出しているけども、思うようにいかなかった
    苛立ちを感じます。」
田中 「えっ!?」
荒俣 「桃、大好きでよく食べるんですけど、桃くらい切りにくい食べ物はないですよね。
     最終的には切らずにガブッといっちゃうんですが・・・。
    先程、黛さんが言われた通り、本人の体験をもとに解釈していいんなら・・・あらゆるセッ
    ティングをしたものの、思い通りいかなっかった、という腹立たしさをを感じますね。」
田中 「・・・『刃』が『歯』になったんですね・・・」

「京扇子(きょうせんす) 遙かな風を 呼びにけり」

荒俣 「扇子の役割として、風を送るのはもちろんですが・・・今、女性がしゃべる時に口に手を
    当てますが、昔の都の人は扇子を口に当てたんですね。そういう役目もあったんです。
    昔の人のヒソヒソ声が聞こえてきそうな句ですね。」
田中 「香りは目に見えないだけに、文章にするのは大変なんじゃないですか」
荒俣 「そう・・・ですね・・・今、こうして句を拝見しても、言外に漂わせたり、花とか小道具
    をうまく使って表現してますよね。普通の文章は・・・かなりダイレクトに・・・自由度が
    高いんで、かなり大げさな事が書けると思います。言葉をつなげていけば、かなり書き
    やすいですね。五七五に詰める努力と比較すると、かなり簡単だと思います。
    逆に、こういうの(句)に、あこがれますね。」

ここから、休憩時間中に会場から募集した句が紹介される。
「香水に 恋〇目隠し されており」
「青墨の ほのかな香り 梅雨に入る」
「父の日の 百合の香りの 中に妻」
「巡礼の 杖に香りし ラベンダー」
「薄物の 袂に匂う 〇〇〇」
など。

黛  「香水っていうのはアルケミストが発明したって聞きましたけど・・・」
荒俣 「アルケミスト・・錬金術師とか・・そういうのでしょうか・・・。
    あれは揮発性ですから、いまでいう科学者が絡んでいたかもしれませんね。」
黛  「ほとんどがアルコールですかね・・・」
荒俣 「80%かそのくらいはアルコールでしょうね。そうとう蒸留しなければそのくらいに
    ならないんじゃないでしょうか」
田中 「男の方が、女性の香りに恋するって事はありますか」
荒俣 「(気付かず)・・・えっ・・・私ですか!?・・・・・あの臭いでクラクラはしますが・・・」
田中 「男性で香水を言い当てる人っていますよね。昔の彼女の匂いだったりして・・・
    そういうのは・・・・・」
荒俣 「(キッパリと)全くわかりません。」
黛  「(笑)」
荒俣 「人間の嗅覚のシステムは、ほかの目とか耳とかのシステムと違って、あまり合理的には
    出来ていないんですね。ダイレクトに来る分、好き嫌いははっきりしますよね。
    私、クサヤの匂いが大好きなんですが、今までそういう人に会った事がありません。」

だいぶハショっちゃったんですが、こんな感じです。
俳句に関してはアラマタの独自の解釈が多く、会場からは失笑が漏れておりました。