※以下はフォーラム開催当時にあったHPの文章です。 
サイトが消えており、管理人さんがどなたなのかすらわかりません。
大変参考になるデータであり、感謝しつつ
http://www.ztv.ne.jp/oif2h8fu/kumanoga.html
から全文引用させていただきます。
-2014.08.24 記-

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◆「みえ熊野学フォーラム」が開催されました。(2001/02/12)

「みえ熊野学フォーラム」レポート

■主 催 みえ熊野学研究会(東紀州地域活性化事業推進協議会内)
■日 時 平成13年2月12日   12:45?
■場 所 熊野市民会館
基調講演講師 荒俣 宏氏
○矢吹紫帆さんのシンセサイザーコンサート 12:45?
○荒俣 宏氏による基調講演        13:50?
   (ベストセラー「帝都物語」等でおなじみの作家)
   テーマ  東紀州(熊野地方)の魅力について

○パネルデイスカッシヨン・・・熊野を語る 14:50?
   コーデイネーター 内田種臣氏(早稲田大学理工学部教授)
   パネラー       北川 正恭氏(三重県知事)
               荒俣 宏 氏(作家)
                寺口 瑞生氏(松阪大学政策学部助教授)
               小倉 肇 氏(紀北民俗研究会代表)
                花尻 薫 氏(熊野自然を考える会代表)

 このフォーラムで「熊野」をキーワードに様々な提言や取組が紹介されました。
 内田先生におかれては、早稲田大学熊野研究所設立の背景やこの熊野地域における魅力、また、今後必要となってくる分野等多くの提言を頂きました。
 また、寺口先生は、講演の中で「こらからの地域づくりで必要なことは、外に向かって開いていくことが必要であり、行政同士の連携が求められる。しかしながら、現実は「協働」がうまく出来ていない。市町村の壁が高いこともあるといった指摘がありました。
 また、今まで、この地域に必要なのは「リポーターを確保すること」であったが、今後はこの地域を応援する「サポーター」が必要である。といった提言を頂きました。
 以下、簡単にフォーラムの内容を報告しますので参考にして下さい。


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  第1部 矢吹紫帆・矢中鷹光シンセサイザーコンサート
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まず、矢吹さんからのメッセージからの幕開けとなりました。

◆◇ メッセージ ◇◆

 熊野市へ引っ越して8が月が経ちました。いろいろと日常生活が不便と云われる、いわゆる過疎地と呼ばれるこの地であります。
 しかし、ここには、降ってくるような星空があり、エメラルドの海に代表される自然があります。私が、3歳の頃、生活していた岡山で見た風景がここにあります。
 ここには、人間らしい生活を過ごすことのできる原点のようなものがあります。
 熊野が大好きです。千年ぶりに帰ってきたような気がします。

◆◇ シンセサイザーコンサート ◇◆

 コンサートの中で、太鼓奏者として、大西さんが出ていました。丁度、私の目の前で演奏していましたが、印象に残ったのが、「怒濤の鬼ヶ城」と題する演奏でありましたが、演奏開始までの大西さんの後姿です。男は、背中で語ると云いますが、この時の大西さんの姿は、それは男惚れのする後姿でありました。また、機会がありましたら、大西さんに何を考えて演奏に望んでいたのか教えて頂きたいと思います。
 私は、矢吹さんのコンサートは、何度か聞かせていただいておりますが、波田須の地を選ばれたということで(私も波田須の空気が大好き)、何か自分と共通する思いがあるのかなと親近感を覚えます。
 また、矢中さんのボイスパフォーマンスにはいつも感動いたします。なぜあんな声が出るのか不思議に思いますが、それ以上に、歌というよりは、自然のメロディーを人間の声を媒体にして、私たちに語りかけているような面持ちになります。


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  第2部  基 調 講 演
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「東紀州(熊野地方)の魅力について」


                        作家 荒俣宏 先生



 荒俣先生は、皆さんもご存知のとおり、「博学者」として有名であります。作家活動のみならず、様々な分野に精通されており、現代の南方熊楠であると私も思っておりました。
  その荒俣先生の講演でありますが、「熊野」については、以前から注目していたこと、そして、何度か熊野に訪れたことはあるが、今回、初めて「熊野」の中心地へ入ることになり、非常に興味を覚えたこと等の発言がありました。
 そして、「熊野」については、太古の時代から、開かれたところ、外からの交流が盛んであった点を語っていただきました。


(講演要旨)

* 熊野について 昔から思い入れがあった。
* 和歌山からであるとか、鳥羽方面からこの地へ入ったことはあったが、遂に今回熊野に入ることができた。
* ここへ来る前、三重をPRしているCMが揉めていると聞き興味を持った。
* それは何かというと、中尾ミエが相撲の格好をしているCMであり、揉めている内容は詳しくは知らないが、興味のあることは、元来、女相撲というものが相撲のそもそもの始まりであったという説がある。
* 相撲はもともと豊作を祈願してのものであり、相撲取りは、化粧をしていた。
* また、相撲の源は、妊婦であり、そういうことからも、このCMはすごく今回の講演において、すごくキャッチャーなものであった。
* この熊野地域は、女性がすごく働く地域であったのでは。能登地方や他の地域ににおいても、共通していることは、働く女性、例えば、海女さんがいること等がある。
* 女性が元来、すごく力を持っており、卑弥呼の時代の魏志倭人伝にも記されているが、日常生活では男女差が無く、和気藹々と暮らしていた世界があった。
* ランクがない社会。これは、女性がすごく働き、力があったということ。
* このことは、日本には古来からあったもの。
* また、海女さんが、海に潜る風習は、これなどは、女性の方が体温の調節が上手く働き、順応していることが昔からわかっていたから。
* そういったことから、強い女であり、妊娠した女性は、強いものの象徴であったのでは。
* 熊野詣でにしても、女人禁制はしていなかった。高野山についても女性に開かれており、汚れのある人、病人等、様々な願いを持ってこの熊野へ来た人に開かれていた。
* 和歌山の熊野古道は、たそがれのイメージあり、皇族・妖怪の世界といった面があると思うが、こちらの古道は、古代・原始のイメージがある。(中世に代表される和歌山のイメージとは違っていた。)
* 異質性も特徴であり、昔から、海を渡って色んなものが流れ着いたのでは。
* 熊野には外国要素を取り入れていた経歴があり、その意味は重要ポイントとして認識している。
* その証拠に、神仏分離の運動が起きてきた明治時代に、紀州が特に狙われたのは、明治政府が神道を国家の宗教と考える時、仏教以外の外国の匂いがするもの、それは、ごず天皇や陰陽道であった。
* そういうものが熊野に集中しておりこの地域の7割から8割の神社が潰されたとも聞いている。
* ここは、修験道にも関係が深く、沢山の外国の神様が関係しており、それが熊野の自然にも言える。
* 南方熊楠が守ろうとしたものは、エコロジーの視点はあったものの、一番の大きな理由は、自然と熊野の文化と密接な関係があり、神社を潰す事が、人々の生活・文化日常の経済までも結果的に壊してしまう予感を持っていたのでは。
* 熊野は生きたままの自然よさと、生と死をセットにしているところである。 「生」という、所謂、日の当たるところの自然と、「死」という、日の当たらない自然両方が相関関係を持っており、その両方を大事にしていくことが重要。
* 一方を大事にするだけではよくない。一枚の葉っぱを考えると、裏と表がセットになっており、片方だけでは成り立たない。
* この熊野は、日本でそのことが一番残っている地域ではないか。


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  第3部  パネルディスカッション
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 演 題 「熊野を語る」

 ■コーディネーター 
   内田 種臣(早稲田大學理工学部教授 熊野文化研究所所長)

 □パネリスト
  北川 正恭
   荒俣 宏
   寺口 瑞生
   小倉 肇
   花尻 薫

(内田)
 * 熊野には、非常に異質なもの雑多なものがあり、それが魅力あるところである。
* 熊野文化研究所を大學に設置したが、この夏から、大學の正式なプログラムとなり、授業を行っている。
* 私は、2、3年前から、こちらに学生を連れて来ており、この地域でどんな事を学べるか考えている。
* 学問の分野でも、大學がアイデアを出し、考えて行かなければならない時代を迎えている。
* 最近、国際化、グローバル化といったことと、分散化、地方化といったことが平行して走っているが、私は、「グローカル」といった概念を大學で打ち出した。
* 結構おもしろいスローガンと思っている。グローバルな問題を考えながら、ローカルなことも考えるといったものである。
* この熊野文化研究所については、大學が、グローカルを目指す考えを持つ中で、「根の国」とか「隠れている」「おどろおどろしい」といった熊野の文化を研究する必要があると考えている。
* それには、オープンな考えが必要であり、学際を越えた自由な論議が出来る、垣根、分野を越えた集まりができ、大學の中で講座を作ることとなった。
* 今後、5、6年はこちらに学生を連れてきてまちづくり等を含め、指導していきたいと考えている。


(寺口)
 * 私がこの地域の活性化に関わるそもそものきっかけは、1993年に前知事から、東紀州を何とかしたいと相談があり、その具体的取組として、「東紀州活性化構想」といった行政の考え方の中で、一年間取り組むこととなったことである。
* 今から思うと、制約の多いものであったが、ここ10年におけるこの地方の様々な活性化の取組のスタートとなったことに意義がある。
* この地域では、従来の行政主導の方法では、各自治体が基礎体力が少ない理由から、広域で諸課題について取組むため、「東紀州活性協議会」が発足させた。
* この協議会が取組んできた大きな柱が二つあり、一つが、人材育成事業として、東紀州活性化大學の創設である。
* 現在、総勢150名ほど卒業がおり、この地域の活性化に寄与している。
* もう一つが、熊野古道の再生事業である。この2点が柱である。
* 私は人材育成事業を展開してきた中で、自分たちの地域を見直すということ、地域の再発見をしてきたこと。その効果として、この尾鷲と熊野を隔てる峠を越えた交流が進んだことが特筆される。
* それぞれの地域間で非常に交流が活発となり、東紀州体験フェスタの開催により、地域外の人たちとの交流も盛んになった。
* そのような活動を通して、地域の中で自信を持ってやる人が出てきたこともその効果である。
* 一番嬉しかったのは、活性化大学のOB生が、自ら企画して北川知事のところへ行こうとしたことである。
* しかし、また、地域が困っていることもある。それは、これからは、地域の側にもきちっと表現できる手法が求められていること。
* 熊野学においても、今後、地域の皆さんが参加できることが大切と思っている。

(小倉)
 * 熊野学運営委員長の小倉です。
* 我々が熊野学研究会で行いたいことは、熊野の地域がこの平成8年以降、今までこんなに注目されたことはかつて無かった程、今も古道に人が絶えることなく訪れていただいていること。
* そういった、昔、巡礼者がここを目指したように何かすばらしい魅力がある、何にもない山の中に来てくれる意味を考えたいと思ったことから。
* 昔から熊野へ来る人に対して、どのように迎えたらいいのか研究調査をし、発信をしたいと考え、その研究機関として「熊野学研究会」を発足した。
* 大切なことは、これからの熊野が取組んでいける参考となるもの、例えば教育の分野、産業振興、地域のあり方等を、この地域の方々皆で考えていきたい。
* 新宮市にも同様な活動があり、これらの活動されている方々と成果をまとめて、皆で共通のものとして次の世代に贈りたい。
* 私たちが今まで、気付かずにいたもの、今日に残されて来たものが数多くある。
* また、その他、文化的なものも多くあり、俳句の世界でも非常に多く、この地域を語っていることがわかっている。
* 一部の人達が研究していたものの、皆の共通財産としては、残って来ていない。
* 新宮市には、佐藤春夫や中上健次といった文学者を生んで来た財産がある。
* こういった文学者も熊野地方を語ってきた大きな財産であり、これの分野も研究していきたい。


(内田)
 * その研究成果はぜひ早稲田でも紹介してほしい。


(花尻)
 * 熊野市からの依頼で、この地域の縄文人が食してきた食べ物を調べたことがある。
* この地域の縄文人は、様々な木の実であるとか、植物を食べていたことがわかり、豊かな食生活があったことを発見した。
* また、海岸部では、楯ヶ崎の周辺にも珍しい植物があったりしていることも判った。
* 熊野川の上流においては、長年に渡って自然に耐えて来た貴重な植物、絶滅種がある。
* 三重・和歌山・奈良の3県に共通の文化、遊び、習わしが残っており、熊野学のみんなで研究をしていきたいと考えている。


(内田)
 * 「熊野の自然を考える会」のパンフレットを見させて頂いた。
* これなどは、もっと、みなさんにご紹介いただければいいのでは。
* また、椰子の実が何処から流れついたといったアプローチも興味があった。


(荒俣)
 * この熊野には非常に不思議なパワーを感じる。
* 未開発部分もあり是非回ってみたい。
* 例えば、昔の漁業が、熊野比丘尼の活動にも大きく関係してきたこととか、かつお漁を通して、漁師が日本中を訪れた結果、熊野神社が至るところに出来た
* 東北でもやたらに熊野神社があり、徐福の墓が秋田にもあった。
* 午前中訪問した「鬼ヶ城」の、坂上田村麻呂の話は、東北の伝記と一緒である。
* こういったことからも、漁船等から昔から交流があったのではと推測される。
* 鰹節について言及すれば、日本橋の三越の前ににある「にんべん」さんの地下に「鰹節博物館」があり、行ったところ、鰹節の作り方をそこで聞いた。
* その話しというのは、???n方が元々、鰹節を考えた」ということであった。
* 熊野節のいう秘密の技法があり、それが土佐へ広まり、また、製品改良がなされ、全国へ広まっていった。
* 鰹節一つを考えてみても、日本中に広まった経緯もあり、その他の食文化も熊野発祥のものがあるかもしれない。
* 東京でも、熊野の痕跡が多くあるのではと思います。

(内田)
 * 全国の熊野神社が廃れて来ていることがあり、これを何とかしたいと思う。
* 熊野比丘尼のシステムは旅行業者の最先端のモデルでもあり、新しいビジネスモデルでもあった



(北川)
 * 三越も三重の松阪である。
* 21世紀は、時代も変わり、このような議論が行政の仕事となる。
* 自分達がこれから何を創るのかといった熱意が必要。
* 自分達で気が付いて、自らで町を創って行くことが大切である。
* これからは、その情熱が無い地域は必ず滅んでいく。
* 成人すると皆、東京へ出て行くような文化を変えないと未来は無い。
* そのような地域づくりを県もやっていきたい。
* 戦後、東京一局集中が進み、その弊害が問題となり、やっとこの地域の特性が発揮できる時代が来た。
* 今までは、リトル東京が発展の象徴であったが、これらは今後絶対無くなって行く。
* これからは、週末は熊野で平日は仕様がないから東京へ行くといった時代が来てもいい。* また、アナログだけでなく、デジタル化を進めて行くことも必要、医療であるとかそういった分野で。
* この地域は一方で、オンリーワンであることを目指したいと皆さんと一緒に思っている。
* 熊野古道が世界遺産のリストに載ったことからも、こらから時間をかけてブラッシュアップしていく。


(内田)
 * こちらに来て地域づくりで思うことは、「言葉が世界を作る」、「力を持っている表現を持っていたい」ということを考える。

(寺口)
 * こらからの地域づくりで私たちが必要なことは、「地域づくり」とは開いていくことが大切であること。
* これは、地域の住民だけでは不可能であり、外に向かって開いていくことが必要であることから、行政同士の連携が必要。
* しかしながら、現実はこの「協働」がうまく出来ていない。
* また、市町村の壁が高いこともある。
* それらは、熊野を「キーポイント」に考えると、どうしていったらいいのかが見えてくるのでは。
* 今までは、ややもすると、この地域に必要なのは「リポーターを確保すること」であったが、今後はこの地域を応援する「サポーター」が必要である。

(荒俣)
 * 和歌山と三重の間が分断されていると感じるが。


(小倉)
 * 行政により昔から分かれていたことが影響しているのでは。


(北川)
 * これからは、この地方において、和歌山であるとか三重であるとかという分けかたは、様々な場面で、非常に不都合なことが起きてくると思われる。
* 情報化時代が進んだ今後は、国・県・市町村の境も曖昧になり、国があって県があって市町村があるという枠組みが崩いく。


(花尻)
 * 熊野川の上流へ行けば交流が出来ているが、河口行けば行くほど、行政の区分けが人の関係の壁ともなっている。


(内田)
 * 和歌山県と話をしていたら、向こうも同じ思いを持っているようだ


(北川)
 * まず、和歌山と情報の壁で壊していこうとしている。


(会場意見)
 * 熊野に住んでよかったと思える人生を過ごしたいと考えている。
* 鵜殿村に住んでいる人は元々地元の人が少なく、多くは他の地域から来た人達がまち創りをしてきた。
* 和歌山県の勝浦から来ているが、今日の講演会は、地元新聞である南紀州新聞で知った。全国紙では、県で分断されているため載っていなかった。
* 出来れば、熊野ナンバーの車に乗りたいと思っている。日常生活で、実現すれば、すばらしいことである。
* ひょっとすれば、各地へ出ている人も今住んでところへ熊野ナンバーで乗るかも知れない。  

   

以上です。