『アラマタ人物伝』荒俣宏 監修(講談社)

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2009.06.26 ISBN978-4-06-215522-9 C8501 1900円(本体)
{2009.07.28(第2刷)ISBN978-4-06-215522-9 C8501 1900円(本体)}
{2009.09.03(第3刷)ISBN978-4-06-215522-9 C8501 1900円(本体)}
{2010.07.07(第4刷)ISBN978-4-06-215522-9 C8501 1900円(本体)}
{2011.**.**(第5刷)ISBN978-4-06-215522-9 C8501 1900円(本体)}
{201*.**.**(第6刷)ISBN978-4-06-215522-9 C8501 1900円(本体)}
{2013.12.13(第7刷)ISBN978-4-06-215522-9 C8501 1900円(本体)}
A5判 角背 並製 カバー装 271頁
監修・執筆:荒俣宏
執筆:荒川直樹、入澤誠、遠藤芳文、武田元秀、新野大、三品純、三原道弘、八重野充弘
装丁:寄藤文平、坂野達也
イラスト:鈴木順幸
企画・編集:オフィス303
取材協力:江戸東京博物館
英語タイトル:“THE ENCYCLOPEDIA ARAMATA”

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[目次]
ARAMATA’S GREETINGS ごあいさつ 荒俣宏
USING OF“THE ENCYCLOPEDIA ARAMATA” この本の楽しみ方
CONTENTS この本の内容
スゴい子ども WONDER CHILDREN
天正遣欧少年使節 4人の少年が世界へ向かう!(遠藤芳文)
天草四郎 数々の伝説のタネ明かし!?(八重野充弘)
水足博泉 悲劇の最期をとげた、熊本の天才少年(新野大)
笠森お仙 江戸のトップアイドルはだれだ?(新野大)
二宮尊徳 少年が小学校の銅像になったワケ(八重野充弘)
田中久重 発明少年「からくり儀右衛門」参上!(荒川直樹)
仙童寅吉 この世とあの世を行き来した「天狗少年」(荒川直樹)
勝五郎 生まれかわり小僧に江戸は大さわぎ!(入澤誠)
仙台四郎 市民に愛されたドテラすがたの福の神(武田元秀)
川上貞奴 芸者屋の小奴が日本初の世界的女優へ(三品純)
大泉黒石 ロシア革命を体験した「世界のいそうろう」(荒俣宏) P.25
川島芳子 少女はなぜ男装のスパイになったのか?(新野大)
小池重明 学校は教えてくれない真剣勝負(三原道弘)
紀元前2~10世紀 B.C.THE SECOND TO THE 10TH CENTURY
徐福 名前がわかる最初の日本居住者か?(荒俣宏) P.28
卑弥呼 鏡よ、この国でいりばんエライのはだ~れ?(新野大)
筑紫磐井 決戦! 九州+朝鮮VS大和朝廷(武田元秀)
聖徳太子 絶対に見てはいけない予言の書(八重野充弘)
蘇我入鹿 『日本書紀』にて、悪役決定!(武田元秀)
大伴家持 歌より反逆!? 負け組人生(武田元秀)
阿弖流為 大和朝廷軍に圧勝した蝦夷の英雄(武田元秀)
最澄 仏教界を立てなおす最長の戦い(八重野充弘)
空海 イヌも感謝する伝説の僧(八重野充弘)
在原業平 愛に生きるイケメンのカンちがい?(新野大)
菅原道真 「学問の神様」が梅にこめた思い(三品純)
紀貫之 女のフリをして日記に書いた(八重野充弘)
藤原純友 瀬戸内海であばれまわった海賊(三品純)
藤原秀郷 大蛇ふみふみ伝説の武将(三品純)
平将門 今もなお「将門のたたり」(三品純)
良源 「おみくじ大師」がこわいものは!?(武田元秀)
袴垂 こんがらがった伝説(入澤誠)
清少納言 紫式部とライバルだった!?(武田元秀)
11~17世紀 THE 11TH TO THE 17TH CENTURY
平忠盛 よくやった! 平清盛のおとうさん!(三品純)
斎藤実盛 泣ける話、ここにあります(三品純)
西行 とつぜん出家し、人造人間をつくった!?(新野大)
源為朝 巨大な矢をはなつ伝説の武者(三品純)
鴨長明 楽しい思い出が見あたらない男(三原道弘)
巴御前 愛のために戦う最強の女武者(八重野充弘)
北条政子 鎌倉幕府を守りぬいた「尼将軍」(八重野充弘)
舜天 琉球王国の初代王は源為朝の子!?(三品純)
後醍醐天皇 呪術で鎌倉幕府を倒した!?(新野大)
楠木正成 幕府を倒せ! 戦の天才が立ちあがる(八重野充弘)
佐々木道誉 派手で気ままなバサラ大名(新野大)
足利義教 ウワサをすれば打ち首! 恐怖のくじびき将軍(入澤誠)
日野富子 ほんとうに「日本一の悪妻」!?(武田元秀)
鈴木孫一 織田信長もおそれた戦国最強の鉄砲部隊(入澤誠)
島津義弘 脱出! 敵陣を突きぬけろ!!(三品純)
天海 江戸幕府をウラであやつるカゲの実力者(八重野充弘)
服部半蔵 忍術が苦手な忍者(新野大)
風魔小太郎 風魔忍者のボスは頭脳プレーで敵をかく乱(入澤誠)
大久保長安 金銀ためてクーデター!(八重野充弘)
出雲阿国 歌舞伎をつくったのは女だった!(新野大)
安原伝兵衛 あっぱれ! 地球にやさしい鉱山(八重野充弘)
加藤清正 りっぱな城でひっぱりダコ(八重野充弘)
細川ガラシャ 悲劇のヒロインはヘビのような女!?(武田元秀)
三浦按針 アイ・アム・サムラーイ!(遠藤芳文)
中井正清 ヨーロッパもおどろいた建築の革命家(武田元秀)
田中勝介 はじめて太平洋を往復した男(遠藤芳文)
小堀遠州 江戸のアーティスト大名!(武田元秀)
山田長政 駕籠かいからタイの王朝の重臣に!(八重野充弘)
栗山大膳 バカ殿を救った大芝居(武田元秀)
左甚五郎 名工が天井に置きわすれた傘(入澤誠)
シャクシャイン 幕府と決戦! アイヌの英雄(武田元秀)
幡随院長兵衛 元祖ヤクザのイキな最期(武田元秀)
貝原益軒 江戸時代のベストセラー健康本!(荒川直樹)
関孝和 西洋に負けない日本の天才数学者!(荒川直樹)
吉良義央 『忠臣蔵』の悪役は、すてきな殿様!?(八重野充弘)
松尾芭蕉 俳句の達人は忍者だった!?(八重野充弘)
荻生徂徠 「ほめてのばす」が学問の道!(武田元秀)
雨森芳洲 韓国では有名人! 江戸時代の腕きき外交官(武田元秀)
18世紀 THE 18TH CENTURY
日本左衛門 日本初の全国指名手配犯は庶民のヒーロー(新野大)
平賀源内 奇人か天才か!? 日本のダ・ヴィンチ(八重野充弘)
上田秋成 目は見えないけど、幽霊は見えた?(新野大)
中村仲蔵 役者魂で孤児から主役へ大出世!(武田元秀)
木村蒹葭堂 9万人と会い、つくりあげた一大コレクション(三原道弘)
林子平 日本を守ろうとして奇人とよばれた男(新野大)
伊能忠敬 隠居後に地球1周歩いた男!(八重野充弘)
司馬江漢 生きているのに自分の「死亡通知書」を送った!?(武田元秀)
蔦屋重三郎 ベストセラー連発の出版プロデューサー(八重野充弘)
大黒屋光太夫 漂流した船長の大冒険!(八重野充弘)
鶴屋南北 自分の葬式の台本を書いた!?(八重野充弘)
堀田正敦 江戸時代最高の博物図鑑をつくる!(三原道弘)
浮田幸吉 世界初! グライダーで空を飛んだ(武田元秀)
葛飾北斎 変人・浮世絵師は引っこし93回!?(入澤誠)
山東京伝 戯作者で浮世絵師だけじゃなく……?(武田元秀)
小林一茶 不幸な人生に負けるな一茶!(入澤誠)
十返舎一九 自分の死もギャグにした日本初の専業作家(武田元秀)
藤原林七 武士の身分をすて、かけたアーチ橋(八重野充弘)
曲亭馬琴 28年かけて106冊の超大作を完成!(八重野充弘)
佐藤信淵 火炎放射で敵の船を焼きはらえ!(武田元秀)
光格天皇 天皇をなめるなよ!(新野大)
鬼神のお松 悲しいさだめを背負った日本一の女山賊(武田元秀)
間宮林蔵 世界中の地図をかえた男(三品純)
平田篤胤 死後の世界が知りたくて……(荒川直樹)
国友一貫斎 星になった鉄砲職人(武田元秀)
頼山陽 座敷牢から名作が生まれる!(八重野充弘)
広瀬淡窓 出身者4000人! 江戸時代のカリスマ塾長(八重野充弘)
大塩平八郎 怒るとこわい!? 超まじめ人間の反乱(三品純)
遠山景元 入れ墨のある人情深き名奉行(新野大)
須藤由蔵 ウワサもホラも売った江戸のゴシップ男(八重野充弘)
鳥居耀蔵 妖怪とよばれた、筋金入りの保守派(武田元秀)
鼠小僧次郎吉 大名屋敷だけをねらったワケ(八重野充弘)
19世紀初期 THE EARLY 19TH CENTURY
江川英龍 気をつけ、前にならえ! 世直し江川大明神(武田元秀)
中村善右衛門 カイコに必要なのはカンじゃなくて温度計(荒川直樹)
竹川竹斎 大戦争を止めたひとりの商人(新野大)
佐久間象山 いかにもオレは「天下の師」だ!(八重野充弘)
松尾多勢子 長野のヤバイばあちゃん、スパイになる(遠藤芳文)
田中河内介 こわ~い怪談の主人公になった幕末の武士(新野大)
浜口梧陵 巨大津波から村人を救った命の火(新野大)
橘耕斎 武士から浪人、流れ流れて外交官!(八重野充弘)
清水次郎長 富士を背負って一大事業、東海一の大親分(三品純)
下岡蓮杖 新しもの好き! 日本初のプロカメラマン(入澤誠)
本木昌造 この本が読めるのもこの人のおかげ!(荒川直樹)
小栗忠順 消えた幕府の金! その行方を知る男(八重野充弘)
西郷隆盛 いまだに都市伝説が語られる維新の英傑(荒俣宏) P.140-141
高橋由一 写真をこえたド迫力の絵画(入澤誠)
根岸浜吉 田んぼを日本一のさかり場に!(入澤誠)
和泉要助 時代を速く走りすぎた人力車の発明者(遠藤芳文)
19世紀中期 THE MIDDLE OF THE 19TH CENTURY
吉田松陰 歴史を動かした僕の言葉(遠藤芳文)
大石凝真素美 人類は竜から進化した!?(入澤誠)
福沢諭吉 ちょぴりヤンチャな「青春事情」(三品純)
土方歳三 鬼とよばれた指揮官は色白の美男子(三品純)
前島密 郵便制度で情報を近代化せよ!(三品純)
富貴楼お倉 伊藤博文がたよった横浜の美人女将(武田元秀)
堀田瑞松 日本で最初に特許を取得したのは彫刻家!?(荒川直樹)
田中芳男 「博覧会男」は上野動物園の生みの親(新野大)
三遊亭圓朝 怪談噺の名人が見つけた幽霊よりこわいもの(武田元秀)
伊庭八郎 時代に逆らった片腕の剣士(三品純)
山添喜三郎 日本の名工、腕ずくで皇帝を感動させる(入澤誠)
山本八重子 戦うヒロイン、銃をすてても、なお強く(入澤誠)
物集高見 5万冊の本を読み、百科事典を完成!(入澤誠)
手島精一 「ものづくり大国」日本の工業教育を“発明”(荒俣宏) P.160
岩谷松平 赤ずくめで世間のどぎもをぬいたタバコ王(入澤誠)
ピエール・ロティ 異世界の少女に恋したエキゾティック恋愛王(荒俣宏) P.162
荻野吟子 屈辱をバネに日本初の女医へ(三品純)
東海散士 帝国主義VS白虎隊士(武田元秀)
葦原金次郎 オレは将軍だし、天皇だ!(新野大)
アーネスト・フェノロサ 日本美術を守ったのはアメリカ人!?(三品純)
津田三蔵 死んだはずの西郷隆盛が引きおこした事件(入澤誠)
下田歌子 乃木将軍もおそれをなした、明治の紫式部(遠藤芳文)
頭山満 イケメンじゃないけどモテた豪傑(八重野充弘)
堀井新治郎 きっかけはエジソン! 親子でガリ版を発明(荒川直樹)
高木正年 弱者のためにつくした盲目の万年ヒラ議員(武田元秀)
名和靖 虫を愛し、虫と闘った、日本のファーブル(武田元秀)
井上円了 オバケを否定する!? オバケ博士(武田元秀)
快楽亭ブラック 古典芸能を救った青い目の真打ち(武田元秀)
御木本幸吉 養殖真珠で世界相手にビジネスを実現(荒川直樹)
嘉納治五郎 小さい体で大男を投げとばした柔道の父(新野大)
内村鑑三 なかなかクリスチャンにならなかった!?(三品純)
白瀬矗 南極点をめざした貧乏探険隊の隊長(遠藤芳文)
黒岩涙香 権力にかみついたマムシ男(入澤誠)
新渡戸稲造 大統領も「BUSHIDO」に夢中!?(三品純)
牧野富太郎 小学校中退なのに東大の博士!?(八重野充弘)
村井弦斎 「発明=愛」で生まれた明治の新小説(入澤誠)
志賀重昻 ひとりの学者が日本の国境を広げた!?(武田元秀)
油屋熊八 富士山頂でコマーシャル!(八重野充弘)
徳富蘇峰 全100巻でえがいた「日本の歴史」(八重野充弘)
川上音二郎 日本初のスペースオペラだ、オッペケペー!(入澤誠)
吉田東伍 最終学歴は「図書館卒業」!?(武田元秀)
青木熊吉 漁師「三崎の熊さん」が大発見!(入澤誠)
謝花昇 沖縄のために戦う正義のヒーロー(武田元秀)
中村直吉 和製インディ・ジョーンズの世界一周無銭旅行(入澤誠)
矢野恒太 統計データで保険をかえろ!(八重野充弘)
玉井喜作 歩いてシベリア横断2万km(武田元秀)
二宮忠八 ライト兄弟よりスゴイ!? 幻の飛行機発明者(武田元秀)
河口慧海 秘境チベットに密入国した僧(八重野充弘)
山田宗有 茶道の家元、日本とトルコのかけ橋に!(武田元秀)
正岡子規 俳人が日本の野球用語を生みだした!(三品純)
夏目漱石 吾輩は孤独である!? (三品純)
岩瀬弥助 本が命! 私財をなげうち図書館をつくる(三品純)
南方熊楠 昭和天皇も愛した「歩く百科事典」(武田元秀)
伊藤忠太 妖怪大好き! 「怪建築」設計者(武田元秀)
宮武外骨 ピリッとしたトンチと風刺の辛口男(武田元秀)
ニコライ2世 日本に来て暗殺されかけたロシア皇帝(荒俣宏) P.207
梅屋庄吉 ネコ魂で中国革命をバックアップ!(八重野充弘)
石光真清 ロシアで命がけのスパイ(八重野充弘)
丘浅次郎 結論! 人類など、ほろぶがいい(入澤誠)
福来友吉 大まじめに超能力を科学する!(八重野充弘)
19世紀後期 THE LATE 19TH CENTURY
樋口一葉 14か月だけ花開いた悲劇の作家(三品純)
星一 入学資格は「貧乏」で「親孝行」(武田元秀)
小林一茶 すべてのアイデアは大衆のために!(三品純)
池田亀太郎 のぞきといえば「出歯亀」は、大まちがい!?(入澤誠)
クーデンホーフ光子 日本初の国際結婚をしたヤマトナデシコ(武田元秀)
押川春浪 野球を守るために闘ったSF小説家(武田元秀)
野口英世 世界的名医の借金伝説!?(武田元秀)
渡辺金蔵 ふしぎな建物「二笑亭」にかけた情熱(入澤誠)
寺田寅彦 ねえキミ、おもしろいと思いませんか?(武田元秀)
前田光世 元祖「格闘王」世界をまたに武者修行(入澤誠)
岡本癖三酔 引きこもり俳人の趣味はトイレそうじ!(入澤誠)
佐久間勉 日本初の潜水艇事故で艇長が遺した言葉(入澤誠)
永井荷風 死ぬまで日記を書きつづけた奇人作家(新野大)
金田一京助 貧乏にめげずにつらぬいたアイヌ語研究(武田元秀)
西村真琴 日本初のロボットをつくった植物学者!?(武田元秀)
志賀直哉 友への情、妻への愛に生きた「小説の神様」(武田元秀)
大杉栄 ファーブル『昆虫記』を日本で最初に訳した(三原道弘)
吉岡信敬 バンカラ応援隊長「虎ひげやじ将軍」(入澤誠)
九条武子 大正日本のアイドルは、福祉活動に殉じた(荒俣宏) P.235
中山晋平 ドン底から生まれた「ヨナぬき」のメロディー(三品純)
今和次郎 「考現学」の提唱者はジャンパーがお好き(武田元秀)
原田三夫 火星の土地を買いませんか?(新野大)
猪谷六合雄 雪を求めて移住しつづけたスキーヤー(三原道弘)
西条八十 歌謡曲に命をかけた文学者(八重野充弘)
長山正太郎 ウソから生まれたヘンな発明(入澤誠)
徳川無声 「話芸の神様」、元祖マルチタレント(八重野充弘)
中西悟堂 日本初のバードウォッチングを開催したお坊さん(荒川直樹)
天野芳太郎 「天野博物館」は日本にない?(八重野充弘)
高柳健次郎 「イ」の字が映って「テレビの父」に(八重野充弘)
20世紀 THE 20TH CENTURY
円谷英二 『ゴジラ』生みの親は『キング・コング』ファン(八重野充弘)
薩摩治郎八 600億円使った! バロンとよばれた自由人(入澤誠)
妻木松吉 「説教強盗」が防犯活動!?(入澤誠)
蜂須賀正氏 恋と探検に生きた不良侯爵(入澤誠)
古川ロッパ 芸は残さず、日記を残したコメディアン(武田元秀)
山之口貘 死ぬ前に、もう少しだけ詩を書きたい(新野大)
三角寛 ナゾの「サンカ」を追いつづけた作家(入澤誠)
榎本健一 喜劇王のプロ根性を見ろ!(三品純)
團勝磨 実験所を守った最後のメッセージ(新野大)
白鳥由栄 4度にわたる逃亡! 昭和の脱獄王(入澤誠)
白川静 漢字の秘密をときあかせ!(三原道弘)
安藤百福 世界の食卓をかえた「ミスターヌードル」(入澤誠)
岡本太郎 グラスの底にも芸術が爆発する!(新野大)
升田幸三 圧倒的な人気があった「新手一生」の棋士(三原道弘)
大山倍達 「神の手」をもっていた地上最強の男(八重野充弘)
力道山 空手チョップで戦後日本のヒーローに(八重野充弘)
手塚治虫 「天国」と「地獄」を味わった神様!?(三品純)
INDEX

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[カバー折り返し]
(前)
あらまた荒俣 ひろし宏
HIROSHI ARAMATA
1947年、東京生まれ。幼少より、宇宙から化け物まで、本の世界を探検しはじめる。このとき以来、エキセントリックな奇人にあこがれ、自分もそうありたいと考えるようになった。中学校では、海の生き物に夢中になり、高校に入ると洋書を原文でせっせと読んでいた。社会人になると、コンピューターの担当をするかたわら、オカルトの世界へ没頭した。女子社員からは一切相手にしてもらえなかった。会社を辞め、百科事典に「トリヴィア」を加える仕事をしたあと、博物学という学問を再発見する。そのころには、ついに友人もいなくなっていた。たくさんの本を出し、テレビ出演などで活躍する現在でも、奇人にあこがれつづけている。「自分は変人ではあるが、奇人になりきれていない」と荒俣氏本人は思っているようだ。

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[帯]
(前)
これ、だれ?
世にもおかしな人物事典
アラマタ博士がみつけた
ニッポンの偉人・奇人・変人226人!
(後)
ほとんど真実。ちょっぴり伝説!?
アラマタ博士が選んだ226人!
スゴいヒト!!
[川島芳子]
少女はなぜ男装のスパイになったのか?
[大久保長安]
金銀ためてクーデター
[野口英世]
世界的名医の借金伝説!?
ヘンなヒト!!
[服部半蔵]
忍術が苦手な忍者
[葛飾北斎]
変人・浮世絵師は引っこし93回!?
[鶴屋南北]
自分の葬式の台本を書いた!?
フシギなヒト!!
[仙童寅吉]
この世とあの世を行き来した天狗少年
[西行]
とつぜん出家し、人造人間をつくった!?
[白鳥由栄]
4度にわたる逃亡!昭和の脱獄王

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内容紹介
これ、だれ?
世にもおかしな人物事典
アラマタ博士がみつけたニッポンの偉人・奇人・変人226人!
フシギなヒト!!
[仙童寅吉]この世とあの世を行き来した天狗少年
[西行]とつぜん出家し、人造人間をつくった!?
[白鳥由栄]4度にわたる逃亡!昭和の脱獄王
ヘンなヒト!!
[服部半蔵]忍術が苦手な忍者
[葛飾北斎]変人・浮世絵師は引っこし93回!?
[鶴屋南北]自分の葬式の台本を書いた!?
スゴいヒト!!
[川島芳子]少女はなぜ男装のスパイになったのか?
[大久保長安]金銀ためてクーデター!
[野口英世]世界的名医の借金伝説!?
(講談社のHP「講談社BOOK倶楽部」)
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荒俣博士が紹介する
ニッポンの偉人・奇人・変人
素晴らしい偉業を成し遂げたスゴイ人、変なことにこだわり続けたヘンな人、意外な行動で人々を驚かせたフシギな人など、日本人226人を紹介。人間って面白い!
(「講談社の児童書 新刊あんない 2009年6月刊」)

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[関連]


ARAMATA’S GREETINGS
ごあいさつ

とうとう、ふしぎな日本人物事典ができあがってしまいました。
ここに取りあげた人々は、偉人や賢人ばかりではありません。失敗した人も、悪事を働いた人も、まったく無名のままで亡くなってしまった人も、たくさん出てきます。冒頭の16ページには、日本史に残る「子ども」を特集しましたし、もちろん国籍も「日本」にかぎってはおりません。なにしろ、日本という国ができる前に日本列島にすんでいたらしい人物まで登場するのですから。
それから、人間はまた、たくさんの面をもっています。いい面も、悪い面も、ひっくるめてその人なのですから。各項目では、事実はもちろんのこと、ウワサや伝説にも注意を向けてあります。みんな、あっとおどろくような「秘密」や「フィクション」をもっているからこそ、魅力を感じるのです。
本書に登場する人物を決める基準となったのは、アラマタが個人的に「共感できるかどうか」ということでした。したがって、有名化無名か、分野のバランスなどはいっさい気にかけておりません。架空の人すらまじっているかもしれません。でも、どの人も、わたしたちが今いるこの日本に深いかかわりをもっています。これらの先輩とめぐりあえたからこそ、わたしは自分の生まれた国に興味をいだき、ここで生きていく希望をつかまえられたと思っています。

※以下の項目を執筆している。

1894~1957
大泉黒石
ロシア革命を体験した「世界のいそうろう」

[PROFILE]長崎県出身。小説家。本名は清で、父はロシア人。1919~1921年に『中央公論』に連載した『俺の自叙傳』が大ヒット。ソビエト連邦(現在のロシア)の劇作家ゴーリキーの『どん底』などの翻訳もしている。

ロシアのニコライ皇太子にしたがって日本をおそずれた随行員アレキサンドル・ヤホーヴィッチが、長崎で日本人女性との間にもうけた男の子。本名は清だが、ロシア名をキヨスキーといい、父の死後、モスクワの小学校に入学した。父親の兄弟姉妹からやっかい者あつかいを受けたが、冬のシベリアなどを体験し、文豪トルストイとも出会った。学校でもいじめにあうが、いたずらや奇行で対抗した。その後、ロシア、フランス、スイスで数奇な冒険を経て、日本に帰国。
この風雲児のキヨスキーがロシア「いそうろう」時代に出会った最大の事件は、ロシア革命だった。自立するためロシアのペテログラード(現在のサンクト・ペテルブルグ)で学生生活をはじめたところ、血みどろの革命さわぎに遭遇。同棲していた小間使いのコロドナとともに、銃弾が飛びかい市民の死体が転がる市街地を必死でにげた。コロドナは撃たれて死んだが、それでもキヨスキーの足にしがみついてはなさない。その体をひきずりながらの逃走だった。こんなすごい体験をした日本の子どもは、ほかにいないだろう。
しかし、帰国しても行き場はない。やとわれた鉄工所ではドイツ語で帳簿をつけてケンカとなる。お産が近くなった新妻をたずねてきた親戚が、大酒を飲んだあげく転落死するという災難にあったときは、棺桶が小さくて頭が出ている遺体と夫婦で一晩過ごすはめに。日本でも地獄に近い生活がつづいたが、清はたくましかった。
20代なかばに出版した、半生記『俺の自叙傳』で、いきなり流行作家となった。その後も矢継ぎ早に問題作を発表したが、理解されずに中央文壇から孤立。それでも日本人にはない大らかさで異端をつらぬいた。異色の俳優だった大泉滉は、大泉黒石の子だが、そのユニークな人柄は、おとうさんゆずりだったのかもしれない。

?~?
徐福
名前がわかる最初の日本居住者か?

[PROFILE]秦(現在の中国)の始皇帝に派遣され、東海(東シナ海)に不老長寿薬をさがしもとめた人物。伝説では日本に上陸したといわれる。真実ならば、実名がはっきりわかる歴史上初の「日本居住者」ともいえる。

中国の正史『史記』に、「じょ徐ふく市」の名で記録される徐福は、斉の国の方士だった。方士とは古代の神秘的な知識をもつ人のこと。仙人をみつけて不老長寿薬を手に入れる仕事もした。斉は、有力な方士をたくさん生んだ学問文化の地だった。始皇帝は、その斉を見まわったとき、ろう瑯や邪(現在の山東省)ではじめてとうかい東海を見た。そして、遠くに見えたふしぎな島影が「不老不死の薬がとれる神山」と知らされた。この島影は、今もこの海域で見られる蜃気楼だったといわれるが、地元にいた徐福という男から、「数千人の男女と技術者、弓兵を乗せた大きな船の大船団を用意してくれたら、自分がその霊薬をさがしてくる」ともちかけられた。始皇帝は、万里の長城建設にもおとらない莫大な費用をかけて船団をつくり、徐福を送りだした。ところが、『史記』の著者、司馬遷によると、徐福は学者や方士の弾圧を実行する始皇帝をだまし、海外へ亡命しただけでなく、平原と広い湿地のある土地にたどりつき、そこに新たな国をつくったというのだ。
では、徐福はどこへいったのか? 韓国のチェジュ済州ド島には、徐福が高山に登って霊薬をさがした話や、通過したときに岸壁に残した「徐福ここを過ぎる」という文字彫刻が残っている。さらに、その後秦に帰ったか、あるいは日本に上陸したか、どちらかの可能性が高い。ただし、2000年以上昔のことなので、日本という国名もなく、国家組織もなかった。この話は正史になるほどなので、日本でも古くから知られ、江戸時代には徳川家のなかからも関心をもつ人があらわれ、佐賀市や熊野の新宮市など各地に「徐福渡来」の伝承が残る。また、アシタバやフロフキが、徐福のもとめた不老不死の薬だといわれる。中国では1982年に「徐福がいた村」まで発見されている。

1827~1877
西郷隆盛
いまだに都市伝説が語られる維新の英傑

[PROFILE]薩摩藩(現在の鹿児島県)に生まれる。倒幕運動の指導者となり、薩長同盟、戊辰戦争で力を発揮。江戸城を無血開城させた。維新後、新政府の陸軍大将・参議になるが、西南戦争に敗れて城山で自殺する。

薩摩藩士で、本名は隆永。ほんとうは、隆盛という名は父親が名のっていた。しかし、維新の功労者を顕彰する書類にあやまって「隆盛」と書かれてしまったため、以後その名にしたといわれる。名君といわれた島津斉彬に抜擢されたが、藩主急死のあと、奄美大島に島流しとなり、復帰後も島津久光と対立して、徳之島と沖永良部島に流された。
隆盛といえば、勝海舟との会談で江戸を火の海にしないことを決断した恩人として有名だ。ところが隆盛は江戸を総攻撃するつもりで、薩摩のさむらいに江戸市中で乱暴を働かせるなど幕府を挑発し、「鳥羽・伏見の戦い」をおこさせた策士でもあった。あとは、薩摩の後ろ盾であったイギリスの了承をえれば、江戸を攻める手はずだったが、イギリス領事のパークスに「降伏している幕府をさらに攻撃するのは国際法違反だ」と反対され、断念したといういきさつがある。しかも、パークスが江戸攻撃を反対したことを知った海舟に、一本とられたというのが真相らしい。
その隆盛が、1877年の西南戦争では賊軍にまわることになった。そして新政府軍の総攻撃を受けた際には、武士の面目を保って自決することになる。ところが、その年は火星の大接近にあたっており、急激に近づいた火星のなかに陸軍大将の制服を着た隆盛が見える、また戦争がおこる不吉なきざしだ、というウワサが飛んだ。
そして1889年に隆盛の名誉が回復されると、隆盛がまだ生きており、近く亡命先のロシアから帰還するといった「都市伝説」がみだれとんだ。このとき、たまたま日本に観光旅行にやってきたロシアの皇太子ニコライ(のちのロシア皇帝ニコライ2世)が、西郷軍の偵察役ではないかと誤解され、暗殺未遂事件までおきてしまった。
ちなみに隆盛の顔はよくわかっていない。東京・上野にある銅像を見た奥さんは「似てない」といったとか。

1849~1918
手島精一
「ものづくり大国」日本の工業教育を“発明”

[PROFILE]沼津藩(現在の静岡県沼津市)出身の教育家。東京高等工業学校校長をつとめ、工業教育の基礎をつくった。1876年に、アメリカ・フィラデルフィア、1878年に、パリで開催された万国博覧会に出席した。

明治政府のもとで工業技術と理科の学校教育に力をそそいだ手島精一。どの小中学校にもある理科室の標本や解剖模型をはじめ、幻灯機(スライド映写機)という文明開化の新知識を学ぶにふさわしい視聴覚教材を広めた。のちに東京職工学校(現在の東京工業大学)を設立、工業教育に力をつくした。同大学には精一の銅像がある。
精一は1870年、22歳のとき、自費留学生としてアメリカ、イギリスに学んだ。当時の客船は食糧となる生きたブタやニワトリといっしょの航海であり、野菜がないため歯を病んだという。外国のおどろいたのは、ものづくりに役立つ工業技術の新しい教育がはじまっていたこと。また、実物展示による博覧会が、効果的な新しい知識の普及の場になっていたことだった。精一はその一例として最新型の幻灯機をもちかえり、まだ開業前の教育博物館(現在の国立科学博物館)につとめた。そこで自然や宇宙のことや工業技術の説明には、「図」を用いるのがよいと考え、掛け図と幻灯機を利用する視覚教育、また理科室づくりを進めることとなった。そのいっぽうで目が見えない人のための点字器具を明治天皇の前ではじめて紹介している。さらに、博物館内に工場を設け、たくさんの理科教材を生産した。そのほか、障害をもつ人や社会人・幼児の教育にも力を入れ、通常の学校教育に熱心な文部大臣(現在の文部科学大臣)・森有礼とは別の道を進んでいく。有礼の方針に反対したせいか、教育博物館はやがて文部省の管轄でなくなり、おこった精一は博物館長を辞任した。
東京工業大学、早稲田大学工学部などを立ちあげ、工業教育を進展させ、68歳で勇退した。精一は亡くなる2週間前まで、毎日くわしい日記をつけつづけた。

1850~1923
ピエール・ロティ
異世界の少女に恋したエキゾティック恋愛王

[PROFILE]フランス海軍の軍人で、ピエール・ロティのペンネームで執筆活動もしていた。トルコやタヒチを舞台にした、異国情緒あふれる小説で有名に。ロティが滞在した長崎には、碑が建てられている。

フランスのいなか、ロシュフォールに生まれた海軍軍人で作家。本名はルイ=マリー・ジュリアン・ヴィオーという。幼いころから夢見がちで、海軍に入隊していた兄が南太平洋のタヒチから送ってきた楽園のような島にあこがれ、みずからも海軍将校となってタヒチをふくむ異国をまわった。
1880年、ヴィオーは兄が数年間現地女性とくらしたタヒチをおとずれるが、あこがれていた楽園の島が西洋文明にけがされ、人々が罪と病のためにほろびようとしている事実を知った。ヴィオーはほろびゆく楽園の住人になるべく、名をロティ(タヒチで「赤い花」の意味)とあらためた。そして島の少女と愛しあうが、別れてしまう。その悲しみを小説にしたものが『ロティの結婚』で出版されると、ヨーロッパにタヒチブームをもたらした。画家のゴッホやアンリ・ルソーが熱愛し、ゴーギャンは愛読のあまり、とうとう自分もタヒチに移りすんでしまったほどだ。
ところがロティは1885年に長崎へやってきて、タヒチのときと同じように、おかねという少女と「結婚」する。日本の少女(娘)は神秘的で愛らしいが、タヒチ女性とちがって心がうつろであり、人形のような印象を感じた。そしてロティは今度もその体験を『お菊さん』という小説にして出版した。この作品も大きな話題となり、フランス的な文化に絶望し、日本の浮世絵に新鮮な美を感じていたゴッホやゴーギャンをとりこにした。ゴッホはお菊さんをイメージした『ムスメ』という名作をかいた。エキゾティックで神秘的なジャパン。でも、ロティは日本文化を愛したというよりも絶望した人だった。『お菊さん』の話の結末は、お金で縁をもった現地妻お菊さんが、別れにロティからもらった銀貨をつまんだりたたいたりしてニセでないかたしかめているシーンで終わっている。

1868~1918
ニコライ2世
日本に来て暗殺されかけたロシア皇帝

[PROFILE]アレクサンドリア3世の子。在位1894~1917年。シベリア鉄道を完成させたが、日露戦争を引きおこし敗北する。1905年、第1次ロシア革命がおこり、1917年、革命軍により処刑される。

ロシア帝国ロマノフ王朝最後の皇帝・ニコライ2世。帝国末期、日露戦争とロシア革命のときの皇帝であり、つねに暗殺や内乱など緊張の日々を送った。しかし、ニコライは若いときから軍人教育を受けており、宮殿よりも軍隊生活を好むたくましさもあった。ただ、当時、ロシア貴族間に流行したオカルトにのめりこみ、皇太子の難病を祈祷でなおした怪僧ラスプーチンを厚遇しすぎて、帝国の崩壊を早めた。
まだ皇太子であった1891年、シベリア鉄道の起工式に出席するため旅に出たニコライは、そのころヨーロッパで大ブームを巻きおこしていたフランス人作家ピエール・ロティのロマンティックな小説『お菊さん』に熱中していた。この旅のとちゅう、そんなあこがれの国「日本」に立ちより、小説に出てくる人形のようにかれんな「ニホンムスメ」に会いたくて、長崎に寄港した。そこでさっこく日本名物の「タトゥー(彫りもの)」を入れたり、花街で芸者さんとの宴会も楽しんだという。ニコライは長崎ばかりでなく、京都から大津にも観光の足をのばしたが、大津でとつぜん暴漢におそわれてしまう。その犯人、巡査・津田三蔵は、運悪く日本中でささやかれていた都市伝説を信じこんだ人物だった。都市伝説というのは、自決した薩摩の西郷隆盛がじつは大陸に亡命しており、ロシアの軍艦に乗って日本に逆襲に来る、というものだった。西南戦争で薩摩を攻めた過去がある犯人はそのウワサにおののき、とうとう、来日したロシア皇太子にテロをしかけたのだった。日本国民はこの事件に衝撃を受け、明治天皇が京都にニコライを見舞ったほどだった。1904年におきた日露戦争も因縁めいている。弱小国と思われていた日本との戦争で苦戦したため、民衆が皇帝を見かぎり、革命へ向かうきっかけのひとつとなったからだ。

1887~1928
九条武子
大正日本のアイドルは、福祉活動に殉じた

[PROFILE]京都の西本願時代21代門主の次女として生まれる。歌人・佐佐木信綱に師事し『金鈴』『無憂華』などの歌集を残した。1923年の関東大震災では負傷者の救済活動などにあたるが、その活動中、病に倒れた。

京都の西本願寺のほっ法す主だった大谷光尊の次女として生まれ、生き仏、阿弥陀さま、とうたわれた女性。瓜実顔の貴族美人といえば、だれもが武子を思いうかべるほど人気があった。琴の演奏や和歌でも名をなした。
幼いときから才色兼備のお姫さまだったので、タイ国の王子をはじめ内外から縁談がもちこまれた。けっきょく九条良致男爵と乾坤、銀行員だった夫が留学するためいっしょに欧州にわたったが、すぐに別居し武子ひとりで帰国した。以来10年、帰らぬ夫をじっと待つ「かなしみの貴婦人」をイメージさせる和歌を詠むことで庶民のアイドルとなったが、現実の武子は帰国のあと本願寺を切りもりし、全国仏教婦人会を立ちあげたほどのやり手だった。さらに、武子が使ったはしで頭をなでると、頭痛がなおるという信仰まで生まれている。いわば「生きた観音さま」として信仰の世界でもアイドルなのだった。
武子はその名声を生かし、光があたらない社会福祉を盛りあげる。また病院や学校を設立し、まずしい人の救済活動にもはげんだ。関東大震災では自分の被害を受けたのに、被災者の救済をつづけた。しかし、1928年に三河島で救済活動をしたとき、歯が菌に感染してしまい、わずか40歳で敗血症のため亡くなった。
そんな武子の実像だが、佳人薄命のイメージとは大きくことなる。震災のあと東京の下落合に転居し夫と過ごした晩年は、となり近所までそうじしなければ気がすまない清潔好きであり、朝5時からおきて自分でそうじした。また、たいへんな猫好きでもあり、近所の野良猫を集めて養うほどだった。外では、「おひいさま」としてふるまうが、家に帰ると「親分の女房」のようにドテラにくるまり、あらっぼく話し、廊下も大またでドタドタと歩いた。そのバイタリティーは、まさに「大正の新しい女性」にふさわしかった。



この項 DOJI-I様