人気トーク番組「加藤浩次の本気対談!コージ魂!!」に登場しました。
まとめておきます。

<番組データ>
番組名 : 加藤浩次の本気対談!コージ魂!!
放送日 : 2014年1月5日(日曜日)
放送時間 : 22:00 - 22:54
放送局 : BS日テレ
タイトル :  #54   荒俣宏(作家)
制作 : (株)SOLIS produce 
番組HP : http://www.bs4.jp/koji/

お笑いの加藤浩次氏が番組ホスト。毎回1人のゲストを招き
1時間徹底的に話を聞く、という人気のトーク番組です。

※ 細かい言い直しや繰り返しなどははぶいてあります。
  またグダグダな感じのところなどはニュアンスをそこなわない程度に
  すっきりさせています。
  加藤さんの、あのしゃべり方を思い出しながら読んでいただくと
  立体感が出るかも。



*******「加藤浩次の本気対談!コージ魂!! / #54 荒俣宏」********


冒頭は、楽屋で加藤さんとスタッフがトーク。
荒俣の印象、今日の意気込みなどを語り、いざスタジオへ。

まずVTRで女性ナレーターによる荒俣の紹介。

コージ魂 荒俣

コージ魂 荒俣

いよいよトーク。 コージ魂 荒俣 加藤「どうぞどうぞ こちらのほうへ」 荒俣「ありがとうございます」 加藤「よろしくおねがいします」 荒俣「よろしくおねがいします」 加藤「荒俣さんとじっくりこうして話してみたかったんですよ」 荒俣「あっ、そうですか。何度か番組でもご一緒して・・・」 加藤「ちょっとですもんね。だからボク「なんなんだろうこの人は」って    ずーっと思ってたんです」 荒俣「あ、そうですか」 加藤「なんでこんなに多岐にわたる知識をおもちなのかっていう」 荒俣「あー・・・でも・・・知らないことのほうが100倍くらい多いですよ」 加藤「・・・っておっしゃいますよね。    知ってる人ほど、知らないことを知っている、っていうことですよ」 荒俣「でもね、サッカーなんて知らないもん」 加藤「あっ、そうですか ボクサッカーのこと詳しいんです(笑)」 加藤「自分では、自分のこと、どういうジャンルだと思われてますか?」 荒俣「作家としかいいようがないでしょうね。これでメシをくってるわけですから」 加藤「作家といってもいろんな作家さんいらっしゃるじゃないですか。    そんなかで、どういう作家だという認識がありますか? 自分のなかで」 荒俣「まぁ、売れない作家ですね(笑)ジャンル分けで言うと」 加藤「いやいやいやいや(笑) 小説もあるじゃないですか」 荒俣「はい ベストセラーもかきましたし」 加藤「ねぇ、300万部以上・・・」 荒俣「やっぱり・・・・何書いてるんだかかわかんない作家だという・・・    ほんとに作家かといわれますね」 加藤「何が一番楽しいですか?(注:なにをしている時が、の意)」 荒俣「やっぱり物を集めてる時ですね」 加藤「えっ、それは本を書く時に資料を集めてるとか・・・」 荒俣「それが一番。で、何か書こうと思うじゃないですか。    そうすると、身の回りで調べたいものがどんどんでてくると、    少しづつ時間を削って調べますよね。    わかりはじめると面白くなってきて、とっつきにくかったジャンルも    大好きになる、っていうのはだいたい私のパターンで」 加藤「あーー、何かたとえば小説を書こうとして、なにか事象を1個調べようと    すると、そこからわーーっと」 荒俣「わーっと、広がる、ええ」 加藤「これ、とめどない・・・」 荒俣「とめどもない、気がついてみるとぜんぜん関係ない事をやってたり」 加藤「(笑)」 荒俣「そういうの多いですよ(笑)」 コージ魂 荒俣 加藤「そこまでつきつめて、どんどんどんどん、普通の人っていけないと    思うんですよ。その飛距離っていうんですか、とんでもない飛ばし方    するじゃないですか」 荒俣「えぇ、そうですね、ええ」 加藤「もういいやとか、もうこれくらにしておこう、っていうのはないんですか?    ストッパー、リミッターはないんですか?」 荒俣「いや、自分もそう思いますよ。そろそろやめないと命にかかわる    っていうのはあります(笑)」 加藤「(笑) 知的要求に対するリミッターがないんですね」 荒俣「あー、先日もね、私、マングローブ帯ってあるじゃないですか、    あそこのなかにいる生き物を観察するのが好きで、時々行くんですよ。暇をみては。    で、この前もパラオっていうとこに行ったんですけれども、    そこがまたワニがいるんですね。    人を食うような、こんなでかいのがいる中を、『ボートのまわりから    10m以上むこうにいったら危ないですからやめてください』    っていうのを、10m以上に先に行って・・・」 加藤「だめですよ」 荒俣「で、いろいろ見ていてハッと気づきました。このままじゃオレ死ぬって」 加藤「(笑)それは行っちゃいけない先に何かあるだろう、自分の見たことが    ない何かがあるだろうっていう欲求ですか」 荒俣「欲求ですね、おそらく。    だから簡単にいうと、命よりも大事なものや面白いものが    すぐ見つかっちゃう体質といいますかね、一番危ない体質だと思いますよ」 加藤「荒俣さん、自分でも普通じゃないな、って思いますよね?」 荒俣「はい、思う。あのー、リミッターがはずれているという」 加藤「ねぇ」 荒俣「それからもうひとつ、子供のころから培ったんだろうと思いますが、    われわれ昭和22年生まれだから、団塊の世代なんですね。    えてして多いんですけれども、やっぱり悲しいことや辛いことに強いですね」 加藤「なるほど。たしかにそうかもしれませんね」 荒俣「悲しい・・・辛いことはむしろ喜んで。それから貧乏とか大好き」 加藤「大好き!?」 荒俣「えぇ、大好き。貧乏自慢っていうんですかね。    どんなに貧乏だったかっていう貧乏比べをするのが、私たち子供の頃    には大好きでした」 加藤「今はもう貧乏ではないですよね?」 荒俣「いまはもう、そこそこちゃんと食べてますけど。    昔はすごかったですよ」 加藤「それはいくつくらいの・・・」 荒俣「えーとねぇ・・・35、6くらいまでは。本当に本とかそういうものしか    買わなかったんで」 加藤「35、6って何やられてたんですか」 荒俣「えーとね、33までサラリーマンやってました」 加藤「それはどういった会社ですか?」 荒俣「たぶん加藤さん驚くと思いますが、水産会社にはいって、    コンピューターのプログラマーやってました」 加藤「えー。そうなんですか」 荒俣「入ったら、いきなり、あのー・・・」 加藤「水産会社のプログラムってどういうものですか?」 荒俣「たとえば魚をとる船員さんたちの給料の支払いのシステムをつくる」 加藤「へへー。それでずっと続けて・・・」 荒俣「9年半くらい」 加藤「あーそうですか。大学卒業してからってことですよね」 荒俣「そうです」 加藤「そっからどうなっていったんですか?」 荒俣「そっからですか・・・」 加藤「プログラム・・・会社員ですよね」 荒俣「えぇ、私、大学生のときから翻訳や原稿書いてたんで、    大学生から作家だったんです」 加藤「あー、なるほど。個人でそういう活動をしてらっしゃった」 荒俣「(うなずく)」 加藤「でもサラリーマンと平行してやってたら寝る時間ないですよね」 荒俣「ないですよ。サラリーマン9年半やりましたけど、1日2時間くらいです」 加藤「平均睡眠時間が?」 荒俣「えぇ」 加藤「・・・すごい生活ですね」 荒俣「えぇ」 加藤「体こわさなかったんですか」 荒俣「これは壊れなかったんですよねぇ、不思議に」 加藤「慣れてくるもんですか」 荒俣「慣れますね」 コージ魂 荒俣 加藤「すごい・・物書きの仕事も増えてきて、そこで仕事を辞めて物書き    一辺倒になるってことですか?」 荒俣「やめてもこれからの時代食えるだろうと思って辞めたわけですね。    33くらいのときに」 加藤「はい。でそこから?」 荒俣「ちょうど運よく、百科事典を作ってる日本で有名な会社があったんですよ、    平凡社という会社ですけども。    この会社が新しい百科事典を作ろうということで、それを編集をする人々を    募集することになってました」 加藤「それって自分が書きたい事とちょっと違いますよね?」 荒俣「えぇ、違いますけれども面白そうだなと思ったんですよ」 加藤「やっぱそこでそう思うんだなぁ・・・」 荒俣「全ジャンルいくじゃないですか、あれは。    そいで、それを編集するとしたら、もう理科系も文科系も、過去も現在も、    場合によってはあの世もこの世もみんなカバーしなきゃいけない」 加藤「百科事典っていうのは、昔お金持ちの家に並んでた・・・」 荒俣「そう」 加藤「こどものころ夢でしたよ、ほしかった」 荒俣「知的なご家庭はかならずワンセット・・・」 加藤「でもあれ高いですよねー」 荒俣「高いんです、あれ」 加藤「なかなか・・・」 荒俣「でもね、百科事典っていうのはよく売れて。    その会社も当時日本一の会社だったんです。そこであたらしい百科を、    新ネタといいますか、新しい事物がふえてきてましたら。    ちょうどコンピュータはじめとして。    で、それを4年間やりました」 加藤「4年間で百科事典すべてをつくりあげて」 荒俣「つくりました。    これがまたねぇ、家に帰りたくなくなるほどおもしろかったです。    とうとう家に帰らなくなり、その後、その会社に22-23年間ずっと    泊まっていました」 加藤「(爆笑)」 荒俣「おうちに帰らなかったっていう(笑)」 加藤「(笑)なんなんすか、それ(笑)」 荒俣「自分でもわかんないんですよ。なんか・・・」 加藤「家はあったんですよね?」 荒俣「えぇ、ありました」 加藤「当時おいくつですか?」 荒俣「さんじゅう・・・それやりはじめたの35くらいから39くらいまで。    いいおっさんの頃ですよね」 加藤「はい」 荒俣「だからどの社員さんよりも詳しかったです。社内のことは」 加藤「お風呂とか着替えとかそういうのは?」 荒俣「まぁ時々は家に帰りますんで、1週間に1回か10日1回くらいは。    そのとき着替えるっていう」 加藤「部屋の家賃はちゃんと払ってたんですね」 荒俣「えぇ、払ってました」 加藤「部屋は持ってて・・・で部屋に帰るのが面倒くさいからずーっと・・・」 荒俣「ずーっと・・・」 加藤「出版社に泊まってる・・・まわりどんな反応でした、その時?」 荒俣「これがね、これは今思い出しても信じられないいんですが、    みんな何とも思わないんですよ(笑)」 加藤「いや・・わかんないです(笑) 普通思うでしょ、あいつ・・・」 荒俣「あいつ、社員でもないのがなぜ泊まってるんであろうって」 加藤「百歩譲ってですね、社員だったら忙しいから・・    それはどこですか? 仮眠室?」 荒俣「仮眠室らしきものはあったけど、仮眠室なぞは使いにくいので、    眠くなると床にダンボールひいてそこに寝て。    ないしは机が・・・すきまがあると机の上で寝るという」 加藤「(笑)しかしすごい時代ですね。    労働基準法とか厳しくなってるじゃないですか」 荒俣「でもね、労働基準法その他一切関係ないですよ。社員じゃないから」 加藤「(笑)」 荒俣「居候ですから(笑)」 加藤「荒俣さんはね(笑)」 荒俣「居候ですから(笑)」 加藤「(荒俣さんが)文句いわなきゃ大丈夫ですね(笑)」 荒俣「そうそう(笑)」 加藤「へんな話、いい時代ですね」 荒俣「いまから考えるとね」 コージ魂 荒俣 (注:以下、冒頭で話がかみあってません)
加藤「そこで、4年後に終わってるんですど、次に何やられたんですか?」
荒俣「次ね、何かやらなきゃね、単なる居候じゃ夜警と同じになっちゃうんで、
   夜警プラス何か仕事やろうと思って思いついたのが、百科をやったときに
   ちょうど扱ったネタがあって。
   私は、これが今の自分を作ってるんだろうなと思うんですけれども、
   通称『その他 雑部門』というところに配属されて」
加藤「『その他 雑部門』!?」
荒俣「(うなずき)そのたざつぶもん。百科で」
加藤「なんでもありなんだ」
荒俣「(うなずき)なんでもありなんです」
加藤「へぇーー」
荒俣「で、主なる仕事が、当時の百科の編集長とそれから会社の社長が偉かったと
   思いますが、これまでの百科事典は正しいことや定まった意見、
   あんまり異端な意見は取り上げないっていうのがあった」
加藤「まぁ、百科事典ですから」
荒俣「お勉強のためですから」
加藤「絶対わかってること、間違いないことだけをかく」
荒俣「(うなずき)まちがいないことだけを書く。
   ところが時代が、その当時かわってきてたんですね。
   面白いことや、間違ってるんだけれども、長い間人々が信じてきたことや
   それから、ひょっとするととんでもない意見なんていうものも、
   人間が考え出したひとつの文化であるから、面白いことや、間違ったことや、
   あるいは迷信のようなこともこれからは取り入れて、全体として
   プラスマイナスで百科事典にしようと」
加藤「なるほど」
荒俣「間違ったこともひける」
加藤「そういうことかぁ。どまん中の正しいことじゃなくて、端(はし)を」
荒俣「両はじをやろうと。そんで、その両端の部門です」
加藤「荒俣さんの根幹というか・・・」
荒俣「(うなずき)まさに」
加藤「えっ、どんなことやってたんですか」
荒俣「たとえば『鍵』なんていう項目ありますよね」
加藤「かぎ?」
荒俣「キー、鍵。
   そうすると、鍵の研究者のかたが、シリンダー錠とかいろんな鍵があって
   こういう鍵がたくさんうまれました、と鍵の歴史をぱっと書くわけです。
   どういうシステムになっているか。
   そのあとに私たちが出てきて、鍵といえば銀行強盗だとか、ロッカーやぶり
   だとか、この鍵をあけようとした人々いる。
   大泥棒で鍵をあけた名人だとか、こういう話をいれようと」
加藤「なーるほどぉ。それは子供が一番喜ぶ・・・」
荒俣「(うなずき)子供が喜ぶ。
   で、銀行の鍵をあけた大泥棒にこういう人がいますとういうのを
   くっつけるんですよ。
   それまでの百科事典っていうのは、そんなことはくっつけませんでしたけれども
   当時みんなが、そういう事をくっつければ、鍵の歴史って膨らむでしょうと」
加藤「あらたな百科事典のかたちですね」
荒俣「そうですね」
加藤「それ面白いなぁ」
荒俣「しかも鍵が発達するっていうのは、半分はロッカーやぶりのおかげですよ。
   今でもそうですよね。あけちゃう奴がいるから次に・・」
加藤「あたらしいものができる、そこを歴史に入れないことには」
荒俣「どういうロッカー破りがいたか、っていうのを探しますよ。
   そうするとそんな本、ほとんどないんですよ」
荒俣「ないですよね」
加藤「ロッカーやぶりの本なんてほとんどなくて探すわけですね、いろんな、
   ありそうなやつを」
加藤「今だったらインターネットでぱぱっとひっぱりだせますけど・・・」
荒俣「当時はないです、ええ。
   で、それで超能力が発達するわけですよ」
加藤「(キョトン・・)どういうことですか、それ。ぽーんと話がとびましたけど」
荒俣「膨大にある本の中でロッカーやぶりの話がどこに書いてあるのか、
   途方にくれるわけじゃないですか。
   しかも、そんなことが書いた本なんてほとんどないです」
加藤「かたっぱしからみても、当たるかどうかわからない」
荒俣「あとは本をみながら。
   平凡社って下にものすごい書庫があったんですよ。
   ちょっとした私立の図書館くらいみたいなやつが。
   で、ず−っと見ていくわけですよ。昔の本から。
   読めないような漢字であったり、なにごとか解らないような本が
   ずっと並んでるんですよ。
   こういのを見ながら・・・ひらめくんですよ。
   ひっぱりだして。
加藤「背表紙だけみて?」
荒俣「背表紙とタイトルと著者の名前」
加藤「・・・で、ひっぱりだして・・・」
荒俣「藤井八郎とかいう名前が著者に書いてあるんですよ」
加藤「はいはい?・・??」
荒俣「藤井八郎・・・八郎・・・八・・・これはもしかしたら
   鍵に関係あるかもしれない」
加藤「(笑)・・・絶対ない・・・・(笑)」
荒俣「直感ですよ(笑) これ直感(笑)」
加藤「八郎・・八・・でなんでカギに関係あるんですか」
荒俣「・・・・あると思いません?」
加藤「(笑) ぜんぜん思わないですよ(笑)」
荒俣「”八”ですよ」
加藤「はち?」
荒俣「こういう風になってるんですよ(指で8の字をつくる)」
 
コージ魂 荒俣
加藤「あー数字の8だったら・・」
荒俣「ちょっと鍵穴っぽいなぁという」
加藤「(苦笑)」
荒俣「そいで、引っぱり出してきて読むわけですよ。
   たとえば、本のタイトルなんかに、英語だったら「ロッカー」とかいう
   タイトルがあると小説でもなんでもとりあえず引っぱり出すわけです。
   で、ずーっと見ながら、もちろん期限があるから何冊もいけないんで、
   まぁ、20冊くらい適当なやつを引っぱり出してきて探すと、時々、
   泥棒の話とかね、天下の大泥棒の話とかね、いろいろ抜き出すんです」
加藤「むちゃくちゃな作業ですね」
荒俣「それね、やってるとねぇ、今言いましたように歯止めがきかなくなります」
加藤「きかないというか、もう・・」
荒俣「リミッターぶっこわれます」
加藤「(笑) それは泊まりますね」
荒俣「えぇ。泊まるでしょ、これ」
加藤「居候もしますわ。もう無理だ、嫌んなるってのはないんですよね」
荒俣「ないんです、えぇ」
加藤「もうかたっぱしから読んでく」
荒俣「だからね、埋蔵金探すようなもんです」
加藤「ほんとだ、見つけたときの喜びっていうのはとんでもない・・・」
荒俣「大変です、えぇ。
   一行でも、こういうロッカーやぶりがいてご金蔵を荒らした、
   事実をつかんだときは。
   その一行を五〜六行に伸ばしゃいいわけですから」
加藤「(笑)」
荒俣「事実を一行つかんだってことで、この喜びを知ってからは
   もうやめられなくなりました」
加藤「はぁーーー」

ここでナレーション。世界大百科事典の紹介。  

加藤「その百科事典、端まで網羅した百科事典って何年くらいかけて
   作ったんですか」
荒俣「4年間」
加藤「また4年間? そっから4年間?」
荒俣「(うなずく)」
加藤「その当時睡眠時間、何時間くらいですか?」
荒俣「やっぱり2-3時間ですよね」
加藤「じゃそのままなんだ」
荒俣「はい」
加藤「むちゃくちゃ大変な作業だわ。
   そっから違うのをやられての20年だったってことですか」
(注:↑この部分も話の流れ・内容おかしかったです)
荒俣「そうです。一番長かったのは10年かかったっというのがあって。
   なるべくこれまで本がなかったようなものつくろうと。
   そうすれば10年くらい書けるから長く居られるだろうということで」
加藤「(笑)そこに(笑)」
荒俣「いままで誰もやったことないやつをやろうということで考えついたのが、
   大博物図鑑という。博物図鑑を全7巻つくりました」
加藤「へー。10年かけて」
荒俣「えぇ」
加藤「いろんな・・・・もう虫からなにからということですか」
荒俣「(うなずき)虫からなにから」
加藤「へぇーー」
荒俣「スタートは『腹の虫』からはじまりましたよ」
加藤「腹の虫・・!?」
荒俣「「グゥグゥ鳴る、『腹の虫の居所が悪いね』っていう」
加藤「ウソでしょ!?」
荒俣「ほんと。私のこの百科事典は腹の虫からはじまりますから」
加藤「なんでそんなふざけるんですか」
荒俣「ふざけてないですよ」
加藤「だって虫っていったら昆虫だと思うじゃないすかですか、みんな」
荒俣「えぇ」
加藤「それ、なんで腹の虫からなんすか」
荒俣「腹の虫だって江戸時代は実物がつかまえられていたり・・・」
加藤「えっ!?」
荒俣「図鑑までありますからね」
加藤「腹の虫の?」
荒俣「腹の虫図鑑、知りませんか!?」
加藤「(爆笑) 知りませんよ!」
荒俣「あっ、これはいかんなぁ。
   今ね、九州国立博物館ってところがあって、ここに室町時代くらいに
   つくられた腹の虫図鑑が発見されたんですよ、最近」
加藤「えぇ」
荒俣「そいで、あまりに腹の虫が面白いんで、フィギュアにしたり、
   絵本にしたりしたら大ブームになって」
加藤「いま?」
荒俣「いま、腹の虫フィギュアとか、腹の虫ストラップをみんな下げてますよ」
加藤「どこでですか?」
荒俣「九州国博で売ってるから」
加藤「都内とか・・・全国的に?」
荒俣「全国的に売りはじめてます」
加藤「え、なんですか、回虫? 腹の虫って?」
荒俣「回虫・・・まっ回虫も含まれますけど、その頃は腹の虫というのがいて
   これがいろんな悪さをして、場合によってはこの腹の虫が、
   お前あした交通事故にあうぜ、とか教えてくれるわけですよ」
加藤「ぉぉ・・それなんですか? 空想のもんですよね?」
荒俣「いや、空想じゃない、医者がこうやって聴診器あてて、あんた腹の虫がいますねと。
   だって疳の虫ってあるじゃないですか、あるいは孫太郎虫とか飲まされませんでした?」
加藤「なんですか、孫太郎虫って」
荒俣「あれ、知らないっすか?」
加藤「知らないです」
荒俣「あの川の中にい・・・」
加藤「(キレて)バカにしてるでしょ、絶対、俺のこと!」
荒俣「いやいや、川のなかにいてこういう・・・」
加藤「いないでしょ!そんなの!」
荒俣「いるんですよ、これがほんとに。これは昆虫学のジャンルですけど」
加藤「昔の書物にそれがほんとに書いてある?」
荒俣「書いてある(強くうなずく)」
加藤「(キレ気味に)ほんとですか!荒俣さん!」
荒俣「つい最近まで日本人みんな、疳の虫切ったりいろんなことを・・・
   癪(しゃく)の虫っているじゃない。
  (わき腹を押さえて)『うっ、しゃくが・・』
   っていうじゃないですか」
加藤「言います言います」
荒俣「あれは、今は胆石とかいってるけど、昔はあれは癪の虫っていう虫が
   体のなかでいたずらをしてるっていう」
加藤「当時、それ絵に描いてるんですか?」
荒俣「はい、描いてありますよ。すごいでしょ、これは」
加藤「腹の虫のかたちが描いてある・・・」
荒俣「(うなずき)描いてある。ちゃんと描いてある」
加藤「当時の人はそれを空想で描いてた、ってことですよね」
荒俣「(真面目な顔で)いや、見たんでしょ」
加藤「(笑)」
荒俣「(笑)見たんです(笑)見たの(笑)」
加藤「(笑)いないでしょ、腹の虫(笑)
荒俣「(笑)だから(笑)いるんだって(笑)」
加藤・荒俣 「(笑)」
加藤「どこまで俺をバカにする気ですか(笑)」
荒俣「今の人だからそう言うんですよ。昔の人の気にもなってくださいよ」
加藤「昔の人の気持ちになったらいるんだと」
荒俣「えぇ。そしたらば見たいと思うでしょ、だれでも」
加藤「うんうん」
荒俣「そしてお医者さんがそれを見つけてくれれば、あぁ治ったなと」
加藤「それがお腹の虫がいるんだと、その時代の人はみんな信用してたってことですね」
荒俣「はい(うなずく)」 

コージ魂 荒俣

加藤「そのね、全7巻って、何人くらいでやるんですか」
荒俣「えーとね、アシスタントの方を1人つけてくれて、編集者の方を1人つけてくれて。
   そいで時々来てもらっては、いろんな情報を3人で手分けして探す」
加藤「2人は代わらなかったんですか?」
荒俣「いや、みんな2年もやると『私このままじゃ人生ダメになります』って言われて
   2年に1回くらいづつくらいかわったから・・・トータルすると5人くらい」
加藤「へー 編集者とアシスタントがかわっていくんですね、どんどん」
荒俣「(うなずき)どんどんかわってく・・・私だけですよ、かわんないの」
加藤「わたし人生もう無理だって、その気持ち、ほんとの普通の気持ちだと思うんですよ」
荒俣「(笑)そうですね(笑)はい」

ナレーションVTR
博物図鑑の紹介

加藤「書きあげるわけですよね、全7巻」
荒俣「全7巻出しました」
加藤「どんな気持ちですか、それ」
荒俣「気持ちはねぇ・・・やらなきゃよかったと思いました(笑)」
加藤「(笑)どういうことですか、それ」
荒俣「だって一番・・・30代から40代の、まぁ言ってみれば最後の活力があるころなんで
   もうちょっとなんか違うことをやれなかったかなぁ・・・という反省はありましたけど」
加藤「でもいろんな煩悩を捨ててやってたわけですよね」
荒俣「はい」
加藤「なんか感慨深いものが・・・なんか無気力になったりとか、達成しすぎちゃって
   次に手がつかなくなったりとかってなかったんですか?」
荒俣「それがねぇ、達成感ってないんですよ。」
加藤「10年かけてるのに」
荒俣「10年間かけて7冊見るじゃないですか。
   なんでこんなつまんねぇもの書いたんだろうかと思って(笑)
   よ−し、もっと訳のわかんないもの書いてやろうという (笑)
   なんか(笑)勇気がわいてきちゃって(笑)
加藤「10年間かけてやって、なんてつまんないもの出してしまったんだって、
   なんで思えるんですか」
荒俣「自分で読んでつまんないからでしょうね(笑)やっぱりね」
加藤「楽しいものにしようと思って書いたわけですよね」
荒俣「えぇ、なるべく楽しいもの書こうと思ってたんですけど、
   やっぱり読者がおもしろく思ってくれないとどうしようもないので。
   その百科事典は本当に今でいえばマニア向けの本でしたから」
加藤「なるほど、ちょっと早かったのかな」
荒俣「親のところにこんなの書きましたよ、って持っていったんですよ。
   そしたら1ページもめくっくれませんでした」
加藤「(笑)息子が10年間かけたものを(笑)」
荒俣「そう。で、母が泣いたですよ」
加藤「なんでですか?」
荒俣「あんたまだ四次元にいるのって。もういいかげん勤めて、っていわれましたね」
加藤「(笑)お母さんはしってたんですか 出版社に寝泊りしてるの」
荒俣「えぇ、ずっと寝泊りしてるの」
加藤「そうなんですね」

コージ魂 荒俣

加藤「何なんですか、荒俣さんがずーっとモチベーションが続く、やりきるってのは」
荒俣「いや、それは割と簡単だとおもいますよ。
   なんかあの、生きていくってことにあんまり感心がなかったんで。
   幸せあきらめてましたから」
加藤「どういうことですか?幸せあきらめるって」
荒俣「偉くなって 結婚して、なんかいいお宅に住んで、おいしいものを食べて、
   そういったような普通の幸せは私には来ないもんだと思ってましたから」
加藤「あ、そういう欲がまったくなかったってことですか」
荒俣「いや、その欲を殺すまでが大変だったんです」
加藤「殺す作業があったんですか」
荒俣「あったですよ、ええ。
   (1人2役で)あのコかわいいなぁ、なに言うってんだおまえは、って言って。
   自らにムチ打ったりなんかしていたわけです」
加藤「なんでムチ打つんですか」
荒俣「だってそのままいくと、そっちのほうに、じゃデートでもしようってね、
   女の子の好きそうな洋服を買ったり、ちょっと小奇麗に床屋でもいこうか
   っていう気分にだんだんなってきて、だんだんダメになっていくというのが
   わかっていたので」
加藤「なんでおしゃれな格好したらダメになっていくんですか」
荒俣「そりゃだって・・・死ぬ思いをして一行をあつめることって、よっぽど
   いろんなもの犠牲しないとバカバカしくてやってられないですよ、はっきりいって」
加藤「(笑)」
荒俣「そりゃ(笑)ガールフレンドとデートたほうが(笑)
   楽しいにきまってます(笑)
加藤「そりゃそうでしょうね(笑)でも結婚んされてるんでしょ、荒俣さん」
荒俣「えぇ、しました。
   友人があの・・・なんていうんでしょうかね・・・
   いまだとキャビンアテンダントっていうんですか」
加藤「CAじゃないですか」
荒俣「はい。昔だったらスチュワーデスっていう、えぇ」
加藤「欲捨ててないじゃないですか、ぜんぜん!
   CAさんって花形じゃないですか!」
荒俣「(笑)だって私が探したたわけじゃないんですから(笑)友人が(笑)
   これならいいだろう、とういう」
加藤「で、お綺麗なんでしょ」
荒俣「えぇ。そいで・・・」
加藤「(苦笑)えぇ、って、そこは否定しないんですね(笑)
   そしたらやっぱ髪も切りたくなるし、ちょっとおしゃれな服も着たくなるし、
   ってなりませんでした?そのとき?」
荒俣「最初はそいういうことをすると似合わないからやめようと思って、一切そういう事は
   しませんでしたけども、ひとつお話をしてみてわかったことがあって・・・
   気持ち悪い人大丈夫だったんですね」
加藤「(笑)アラちゃんかわいいーって(笑)」
荒俣「(笑)今だったらキモカワイイって(笑)」

加藤「(笑)そっからお風呂とかはいるようになりました? みだしなみも?」
荒俣「まぁ一応ね、えぇ」
加藤「へーー。すごいみてくれ・・・」
荒俣「だから人間なんとかなるんですよ。
   すべてをあきらめても、なんとか・・・拾う神ありゃ捨てる神・・・逆か、
   捨てる神ありゃ拾う神ありという。
   私がね、加藤さんに何かお答えができるとしたら、こんな人間でも生きられた最大の秘訣」
加藤「なんですか」
荒俣「意識はしなかったけれども、師匠を探すめ目あったってことですね」
加藤「あー、なるほど」
荒俣「中学3年のときに、私はお化けの本が大好きだったんで、お化けの本を
   もっと読みたいというので、当時もう60くらいになってたと思いますが、
   平井呈一先生という、大大家(だいたいか)の英文学者のかたに・・・」
加藤「あっ、英文学者」
荒俣「中3でお手紙出したんですよ。
   弟子にしてちょうだいって。
   そしたらら凄いいもんで、その先生、会って驚きましたよ。
   白髪の先生で、洋服着たことがないという」
加藤「手紙出したら、手紙返ってきたんですか?」
荒俣「返ってきたんですよ。お答が」
加藤「中学生がかいたものに」
荒俣「そしたらそこに書いてあったのが、お前はめずらしい、中学生なのにお化けの本が
   読みたいとは。大変気にいったから弟子にしてやるんで、英語を学びなさい。
   それまで私、英語が大嫌いだったんですけど」
加藤「はい」
荒俣「その先生にそう言われて英語を一所懸命読んでいるうちに、これが不思議ですね、
   どんど・・・」
加藤「読んでるうちって、辞書調べながら・・・」
荒俣「えぇ、調べながら1冊よみ2冊よみするうちに、バカみたいに読める
   ようになってった」
加藤「へはぁー」
荒俣「で、その先生がいろんなことを教えてくださって」
加藤「そっか、分岐分岐で師匠がいるわけですね」
荒俣「師匠がね、全部おじいちゃんだったんです。
   だから人生のことも教えてくれましたし、最後は水木しげる大先生ですよ。
   私ほとんど・・・」
加藤「水木先生はどうやって、それは編集にはってからですか?」
荒俣「水木先生はね、ある日対談の相手に呼んでくれたんです」
加藤「なんでですか」
荒俣「大博物図鑑をみて。訳のわからぬものをやってるわ、って」
加藤「10年つくったあとなんですえ」
荒俣「この人はこれで餓死しないんですか、とか言われながらw
   腹の虫とかを見て、これはちょっと面白いといういうので対談に呼んでもらいました。
   で、私は水木さんの妖怪マンガ大好大好きだったんで、会ったとたんに、
   奥様と居並ぶ前で「弟子ににしてください」、もう直接」
加藤「言ったんですか」
荒俣「はい、土下座して
   そしたらほぉとかいわれながら、弟子にしてくださいました」
加藤「へー」
荒俣「だからもう弟子フェチというか」
加藤「(笑)」
荒俣「偉大な師匠がいるんで、今にになれたとおもうんです。
   だから、老人好(ず)きですね」
加藤「(笑)」
荒俣「老人好き、ええ」
加藤「ちょっと、どういうことですか?もう少し説明してもらっていいですか、詳しく」
荒俣「やっぱり長く人生をすごしてきた人はそれなりに哲学をもってる」
加藤「たしかに」
荒俣「なによりも、そういうひとたちはみんな苦労してるんです。
   だから生きるってことがどんなに大切か、それも、生きること以上に自分が
   生きてる実感わくっていうのは、研究したり、マンガ書いたりっていうことが
   大切なんだっていう事を、身を持って教えてくれた先生だったんですね」
加藤「なるほど」
荒俣「そしたら捨てやすいですよ、いろんなことを」
加藤「ほぉー」
荒俣「いい会社にいこうとかってのは、ぼんぼん捨てられる」
加藤「生きるってことを考えたんですね」
荒俣「生きるので一番楽しいことは、やっぱり自分が好きなことをやり、
   気に入った先生にいつもいろんな話をしてもらうというのが、これが最高で。
   2番目3番目くらいになると、好きなガールフレンドといっしょに暮らせるとか
   ってのがでてくるんじゃないかと」
加藤「ふーん」
荒俣「ながいスパンで見るとそう思うんですよね」
加藤「そっか」

コージ魂 荒俣

加藤「いまのエピソードでちょと感じたんですけど、荒俣さんそうとう硬派ですね」
荒俣「あっ、そうですか!?」
加藤「そいうことじゃないですか。
   色恋とかそんなことじゃない、オレは自分やりたい研究をやるんだという
   この意思というか」
荒俣「あっ、意志は強固でした」
加藤「ね」
荒俣「根性だけはすごかったです」
加藤「それは言葉にしたら硬派なことですもんね」
荒俣「そうかもしれません、えぇ」
加藤「そういう師匠にあこがれがあるから、自分も絶対まがらないでいこうという」
荒俣「おっしゃるとおりです。そうですね」
加藤「自分の好きなことをやるっていうのは、これたぶん、終わりないんですよね」
荒俣「そうですね、ええ」
加藤「着地は絶対できないですよね」
荒俣「えぇ、まさに」
加藤「着地するときは死ぬときですよね、たぶん」
荒俣「まさにそうですね」
加藤「完成することがないですもんね
荒俣「感性はしないですね。たぶん」
加藤「完成はたぶんないですね」
荒俣「たぶんないですね。それは言い得て妙だとおもいますね」
加藤「そうなると、やり続けるだけ」
荒俣「やり続けるだけ。でも終わりは必ず来るのは、自然にうけとめる。
加藤「うん」


荒俣「その、終わりがきた時に、私は、理想は相撲の星取表でいえば『七勝八敗』が
   いいなぁといつも思っています」
加藤「ほぉー、ちょい負け」
荒俣「ちょい負け。この負けることが重要で、人生ってプラスで終わりになるのは
   ろくなことがにないと思ってるので、ちょい負け、ちょっと借りるとういうのが」
加藤「どういことですか、負けの美学ってあるんですか」
荒俣「やっぱり1勝・・・星1つ分くらい負けるのが一番なんじゃないか。
   つまり負けてるってことは誰かが得してるわけですから」
加藤「はい」
荒俣「だれかが一勝してるわけですから。私が負けた分、だれかが一勝してる
   ってことが一番いいんじゃないですか」
加藤「(膝を打ち)カッコイイ!荒俣さん、弟子にしてください!(頭を下げる)」
荒俣「・・ヒェッ!? (笑)しましょう、弟子に(笑)」

コージ魂 荒俣

加藤「かっこいいなー」
荒俣「加藤くん、弟子かぁー(天をあおぐ)うれしいなぁ(笑)」 
加藤「今のことば、かっこいっす。
   普通、常人だと8勝7敗っていう言い方する人が多いんだと思うですよ」
荒俣「そう。そんなの自分が勝ったってしょうがないですよ。死んじゃうんだから。
   負けてないと。貸してないといだめですよ、どっかに借りてないと」
加藤「俺は1個少ないんだっていう、一つ足りないオレは、っていう」
荒俣「足りないものは多いほうがいいんだと思うんです。
   それだけ誰かが勝ってるわけですから」
加藤「わぁー、それかっいいですね。
   損だ得だっていう世の中をみててどう思ってますか?」
荒俣「やっぱり損すよ。損しないと。
   あのね、これはね、うち下町の一家だったんで、父も祖父も下町のおじさん
   たちでしたから。
   このおじいさんたちって、今おもうと、子供のころは嫌だなーって
   思ってたんですよ。損が大好きなんです」
加藤「え、それどういうことですか。下町で損が大好きって」
荒俣「お祭りあると、家の仕事ほっぽり出してそっちへ行って、お祭りのみんなの
   お世話をやき、近所で夫婦ゲンカがあると仲直りをさせ、火事があると
   焼けだされた人々を、家は貧しいのにひきとってやる。
   そいで・・言い方がまたいいんですよ。
   町内会なんかだと、町内会のおじさんたちが、最初の実家が上野だったんですけど、
   おじさんたちが集まって会合があって集まるぞと。で『おい、また損する話もってきたよ』
   っていうんです」
加藤「はい」
荒俣「みんな『え、損できんの』って、おやじたちが言うんだよね、これが。
   『で、どんな損だ』って。
   実はね、この間の台風で浸水したんで、みんなでお金だしあってドブさらわなきゃ
   いけなんだ、ついてはお前たち1万円づつ集めるからな。
   ありがてぇ、1万円損できんのかと。
   私これをみていて嫌だなと思ってたんですよ。
加藤「子供のころは」
荒俣「ええ。
   そんなとこに1万円使うなら、ウチでうまいもの食わせろろよって思ってたんだけど、
   最近になってきて、7勝8敗の美学がわかってくるようになると、あのおやじたち、ふだん
   飲んだくお母さんたちを困らせてばっかりいるのに、かっこいい大人だったんだなぁ
   とつくづく思いますね」
加藤「粋ですねー」
荒俣「粋」
加藤「そういう文化もう1回、みたいな」
荒俣「あったんですよ、むかしは」
加藤「今もう1回まわってこないもんですかね、難しいしいんですかね」
荒俣「たぶん難しいとおもいますよ・・・
   あれね女性が許さないとだめなんですよ」
加藤「なーるほど」
荒俣「あれね、お母さんがね、また損しやがって、って言うとだめなんです。
   わかったよ、じゃあ、あんたにそっとかくれて質屋にもってく、みたいな
   度胸のすわったお母さんがいないと。
   日本もやっぱりお母さんでもってるんですよ。
   男ががそんなバカなことができるのは」
加藤「そうですよね。女性の器量によって、けっきょく男なんて女性の手のなか・・」
荒俣「そう、手のなかなの。けっきょくは」
加藤「ちょろちょろしてるだけですもんね」
荒俣「ええ。(加藤さんに)7勝8敗かっこいいって言ってるけど・・・
加藤「はい」
荒俣「女の人はこれを見たら笑ってますよ。
   バカ言っちゃいけない、私なんか1勝14敗いだよ、っていう風に」
加藤「(笑)そうなんですよね。
   そういう本1冊書いてもらえませんかね」
荒俣「(笑)そうですか」
加藤「今読みたい人いっぱいいるし、僕ら40代でもいい時代だなって思いますもん。
荒俣「そうですね」
加藤「それ読みたいなぁ」
荒俣「小説かこうかなぁ・・弟子のすすめだからなぁ」
加藤「師匠、おねがいします」
荒俣「(笑)タイトル『7勝8敗』」
加藤「いいですねー(笑)それはぜひ書いてもらいた」
荒俣「いいですね」

加藤「すごいわ、そのパワー。いろいろ聞かせてもらいました。ありがとうございました」
荒俣「いえいえ、とんでもない」

トーク終了

ゲストに色紙に一筆書いてもらう「魂の一筆」コ−ナーへ。

加藤「最後になりますけど、荒俣さんにこの色紙にいつもホニャララ魂、っていうのを
   みなさん書いていただいてるんですけど、何魂にしましょう?」
荒俣「そうですね、私も仕事何やってるかわかんないんで、その原動力は好奇心だと思うんで」
加藤「なるほど」
荒俣「好奇魂」
加藤「こうきだましい、いいですねー」

サラサラと一筆。 

コージ魂 荒俣

荒俣「これが一番だと思います」
加藤「好奇魂、生きる力。ここが一番大事ということですね」
荒俣「好奇魂あれば、あらゆる悲しいことを乗り越えるられます」
加藤「いろんなこと、自分が好きなことやっていられる限りはその困難はいくらでも乗り越えられる」
荒俣「どんな犠牲も払えます」
加藤「そこだけに集中できる」
荒俣「そういうことですね」
加藤「わかりました。本日はありがとうございました」
荒俣「ありがとうございました」

番組終了。スタッフロールが流れるなか

加藤「ありがとうございました」
荒俣「ありがとうございました。じゃ、またどっかで。ありがとうございました」
加藤「弟子にさせていただきました」
荒俣「いや(笑) いい弟子を(笑)。ありがとうございました」
この後、加藤さんの感想が1分ほど。で番組終了。

 

以上です。
なお番組HPの後日談コーナーに以下の文章が掲載されました。


スタッフコラム


今回のゲストは、作家の荒俣宏さん。
出版社に20年以上住み続けたエピソードからステキな奥様のことまで
多岐に渡ってお話いただき、ありがとうございました!

それにしても、あの知的欲求…スゴ過ぎです!
 収録前に打ち合わせをしたときも、荒俣さんから衝撃の一言があったんです。

それは、
 「例えば、妖怪の話を始めたら、加藤さんに説明するのに2〜3週間かかっちゃいますけど
 大丈夫ですか?」

…妖怪の話だけで2〜3週間って…。
いやはや、ホントに「知の巨人」です!


以上です。 -2014.08.11作成-